コーンッ



隣に置いた、缶コーヒーが蹴飛ばされて、川に落ちた。


「ちょっと!!なにすんの!」



私はしゃがんだまま、そいつを睨んだ。



「あ〜。ゴメン!足長くて!」



「………………‥ウザ。」



視線を川に戻して、小さくそう呟くと




「泣いてんの?」


そいつが、私の前にしゃがんで、不思議そうな顔をした。



「くま、すごいで?寝てへんのか?」




「…………………。」




「誰かと、こんなとこで待ち合わせ?」



「彼氏。」




「そうなんや。何時に?」




「知らない。来ない。ずっと待ってるのに。」



「まあ、待とうや。俺も付き合ったるわ。」





初めて話すのに、不思議と楽しいと思った。

触れてはいけない話は決してしてこない。


寛貴とは全く違う服装だけど、心に少し余裕ができた気がした。



きっと、このときの私は



誰かと話したかったんだと思う。



私の事を知らない誰かと。



まだ、寛貴の事を信じたくなかった。




この日、“ゆうや”は部屋を貸してくれた。



朝起きたら、まだ帰ってきてなかったから職業が分かっちゃった。




次の日の夜から、私は通い始めた。



一人でいられなくなったのかもしれない。



でも、分かってるんだ。



夜、会いたくなる人は、自分の心が寂しいだけ‥‥‥


朝、会いたくなる人は、自分が本当に好きな人―――……‥。