―――――‥…

――…‥‥



私は結衣のおばさんに聞いて
寛貴くんの病院に向かった。


もう夕方だ。

面会時間を過ぎている。




「すみません。
鳴宮寛貴さんはどの病室ですか?」


「鳴宮さんですか…?
ちょっとお待ち下さいね。」


ふと目線をエレベーターの方へ写した。



チーン

カツ カツ…‥―




私はエレベーターから降りてきた
真っ黒のロングコートに
派手な盛り髪の女に目を奪われた。



私は看護婦さんに頭を下げ、
急いでその女に駆け寄り、
腕を掴んだ。






「…‥‥杏菜…‥」



ロングコートに派手な盛り髪の
結衣の顔はどうしているの?
と今にも問い詰めてきそうだった。



―――「結衣、時間いい?」


私は結衣の顔を無視して
自然に問い掛けた。


「‥…うん。」




――――…


私達は近くの喫茶店に入った。



私は沈黙をわざとらしく破った。


「結衣〜何か食べる?
これ好きそうじゃん!
抹茶パ……―」


「一人で来たの?」


結衣はコートも脱がないで
私を見つめる。



「そう。結衣なんか食べたら?
どうせ何も食べてないんでしょ?」


「なんで来たの…?」


「結衣が電話してきたんでしょう…」


「心配してくれたの…?
なんでこんな格好か聞かないの?」


結衣は涙をこらえていた。


「元々そんな格好してたじゃない。」


結衣は少し戸惑った後


「……‥あのね、
新しい彼氏ができたの。
もうこれがカッコよくてさ、
寛貴と比べらんないくらい
稼いでてさ!」
と言って来た。


その時の結衣の顔は笑ってたけど
目だけはなぜか悲しそうだった。


「結衣…」

「あっ、私行くとこあるから!
じゃあゴメンね。」


結衣はカツカツと音を立てながら
静かに消えていった。


――――――…

―――‥…