「ごめんって!
余計なこと聞いてゴメン!」


「おい杏菜ー!」


私は後ろから叫ぶ翔平の声を
ひたすら無視して歩いた。



だけど、歩きにくい砂浜で
私の足は絡まってしまった。




「きゃあっ!」


―――ザザッ


「あははは!
何やってんだよ、バカー!」



翔平が駆け寄ってきて
転んだ私に手を差し延べた。



「―…‥バカじゃない。」


私の目からは涙が溢れていた。



「嘘。…‥‥泣くなよ。」



翔平がしゃがんで私の頭を撫でた。



どうしてそんな事言うの?

どうして優しくするの?

どうして傍にいてくれるの?

どうして…‥‥


聞きたいのに聞けなくて、
代わりに涙がこぼれたのかもしれない。



私…‥翔平が好きなんだ。



―――――…‥



マンションの前に翔平が車を止めた。


「ほら。着いたぞ。
今日は付き合わして悪かったな。」


――翔平と離れたくない…‥。
翔平のこと、もっと知りたい。



「…‥私ね、妹がいるの。」



「…え。なに急に。」


翔平は困ったように笑った。



「だから家に帰りたくないの。」

自分でも何が言いたいのか
よく分からなかった。

翔平の事を知りたいと思うと同時に
自分のことも知ってもらいたいと思った。