―――…



翔平についてきたものの、



どうしていいか分かんない……




連れてこられた所は

翔平の働く、ホストクラブの裏。



“ちょっと待ってて!”

と言って店に入ったきり、

30分も戻ってこない。




私は気になって入口にまわり、
扉を少し開けてみた。


するとすぐ近くに
翔平と20代後半くらいのホストが
真剣な話をしているようだった。


私は耳を澄ませて
盗み聞きしようとした。
でも、聞き取れるのは少しだけで
いまいちよく分からない。



―――「……で、…………い…」



―――「まっ…………女……」


――「違いますよ!
ただの友達ですって!!」



――――…

翔平が急に大きな声を出した。



もちろん私にもはっきり聞こえた。




――――…“ただの友達”





それって私のことだよね…?






―――――――…




「お待たせー!
ごめんな!寒いのに。」



ポケットに手を入れて
寒そうに肩を上げた翔平が
笑顔で駆け寄ってきた。



「……うん」



私は立ち上がった。



「どしたの?元気ねーじゃん!
アンナちゃーん?」



翔平が私の顔を覗き込む。




「………別に」



意地っ張りな自分が嫌だった。
素直になればいいのに……




「あっそ〜。
じゃ、付き合ってくれて
ありがとうな。」





翔平が急に
私に背を向けて歩きだした。




翔平の大きな背中は
強そうで…でも
何かを抱えているように見えた。



――――――…


私の手は
翔平の腕を掴んでいた。




翔平は優しく
私の頭を撫でてくれた。



「………ごめん…」



私は俯き加減で謝り、
翔平に抱き着いた。



翔平が私を抱き寄せることはなかった。