――――…

時計の針は0時を指している。



行き場のない私は
切符売り場の前でため息をついた。


―――どこ行こう…‥



鞄を探っていると
見覚えのある紙切れが目に入った。



翔平の名刺――…


なんで入ってるの?


そう思いながらも
私は裏に書いてある
携帯番号を眺めていた。





―――『はい?』


不機嫌そうな翔平の声。


「あ、あたしっ。アンナですっっ。」


『アンナ――‥!?』


翔平の声が急に明るくなった気がした。



「あっ、別に淋しいんじゃないよ!
ひまだっただけ!」


――嘘つきな私。
素直になれたらどんなに楽だろう…



『今どこにいんの?
あっ、友達大丈夫だった?』


こんな私に優しくしてくれる
翔平は、きっと
お金のために笑うような人じゃない。

女を騙して
貢がせるような奴じゃない…



「友達の家―…
いれなくなっちゃって…
でも、心配しないで。
行く当てはあるから。」


強がりな私。
本当は心配してほしいくせに…


『ふ〜ん。で、今ドコ?』


電話越しの翔平の後ろで
大きなアナウンスが聞こえる。


「―…翔平こそ…どこ?」





私の目が誰かを捕らえて
離さなかった。




――――――…

目から涙がこぼれた。



その人物は私の前にしゃがみこんで笑った。





「泣き虫ー!」



翔平は携帯片手に私の頭を撫でた。



嬉しくて安心して
私の涙は止まらなかった――…