―――“カチャッ”



結衣の家の扉を開ける。



いつも静かな結衣の家族が
今日は慌ただしかった。




「おばさん!どしたの?」


「あっ!アンナちゃん!」


ボストンバッグに
服を詰めるおばさんが
私がいるリビングの入口に来てくれた。



「結衣から連絡あった?
おばさん達も今から
大阪向かうんだけど…」


「あの、
大阪で何かあったの?」



「あの子、言わなかったの?」



私が頷くと
おばさんは一度ため息をついた。



「――…寛貴君、
このあいだから大阪に
就活に行ってたでしょう。
夕方、電話かかってきてね、
事故に遭ったらしいのよ…」



「――――…えっ‥
寛貴君、大阪に行ってたの?」





「知らなかった!?
寛貴君が大阪行っちゃう
前の日にアンナちゃん来たから
てっきり知ってると思ってたわ…
最初は着いて行くとか
結衣も言ってたんだけどね…
ちょくちょく大阪行ってたのに
アンナちゃんに
どうして言わなかったのかしら…」



結衣は言えなかったんだ…
あんな状態の私に。



「おい!用意できたか!?」


おじさんの声。



「あ〜!もう少し!」


おばさんは戻って
詰めかけの服をまた詰め始めた。



「アンナちゃん!
どうする…?」


おばさんが服を詰めながら言う。



「あ…私、
明日授業あるし…帰る!
長い間、ありがとう。」


着いて行くにもお金がない。
これ以上迷惑かけたくない。

私は駅に向かって歩きだした。