結衣はめったに電話なんて
かけてこないのに…‥

変だと思い、すぐ通話ボタンを押す。





「もしもし?結衣?」



―――『グス…… アンナ?』


「――!どしたの…?」


結衣は滅多に泣かないのに…
驚きを隠せない私に
隣の翔平も心配そうな顔をする。



『私、しばらく家帰んない。』






「――――…‥へ?」



一瞬結衣の言葉の意味が
分からなくて固まったが、
すぐに頭を働かせた。



「なんで!?いきなり!」




『………‥寛貴が‥』


それだけ言うと
結衣は電話越しに
泣き出してしまった。


私には
どうしていいか分からなかった。


「結衣…どこにいるの?」




『…‥大阪。』



「ええ!?」



私達の住む東京から
大阪はそう遠くに感じないが
実際、距離はすごくある。




『…‥詳しくは
お母さんに聞いて。
また連絡するから…
ごめんね。』



一方的に電話を切られた私は
頭がぐちゃぐちゃだった。




「――…友達?」



放心状態の私に
優しく翔平が問う。



「どうしよう…
意味わかんないよ…
居候させてもらってる友達が
今、大阪にいるって…」



「えっ、なんで?」



「わかんない…
とりあえず帰る!」



「おう。行くぞ!」


翔平は一緒に駅まで来てくれた。




「ありがと!」


「気いつけてな!」


改札を抜けた私に
翔平は手を振ってくれた。

思わず頬が緩んでしまった。