「やめろよ。」


翔平の低い声は
こんな騒がしい場所でも
私の耳に届いた。



「お前、あん時の‥…。」


隼士は翔平を睨む。



「暴力で従わせようとするなんて
一番弱い人間のする事だよ。
暴力で解決できる事なんて
この世に存在しねえよ!」


翔平は隼士の腕を
力いっぱい握り、
私から離させた。




隼士は我に返ったかのように
自分の手を見つめた。




―――――…





「はい!ココア2!」



「………」



翔平が笑顔で差し出すココアを
無言で受け取った。


私達は、昨日の公園に来ていた。



「アンナさあ!
俺になんか言う事あんじゃねえの?」



「……助けてくれて‥?」



「――じゃなくって!ココア!
お前この前も無言だったじゃん!」



すねたように言う翔平が
なんだかとても可愛いく見えた。



「――…‥ありがとう。」


ココアを両手で持ちながら
チラッと翔平を横目で見ると

少し驚いていた。



「お前、
ちゃんと言えんじゃん!」


笑う翔平を見ると落ち着く…





ココアを飲んでいると
翔平が近くに寄って来た。



「‥…なに?」


体が急に熱くなる。



翔平は私の足にあるアザを見て


「もう、あいつとは別れたの?」


と聞いてきた。



「…‥別れた。」


私が言うと翔平はため息をついた。



「そっかー!
じゃあ、あのファイルもういらねーの?」


「…ファイル?」


「ピンクのお前が忘れてったファイル!」



「――えっ?
持っててくれてたの…?」



驚く私に「当たり前だろ!」と言って
コーヒーを飲んだ。




♪〜♪〜♪〜♪♪〜


携帯が鳴った。


「ちょっとごめん。」


翔平が頷いたので液晶を見る。



♪:着信 結衣