―――…


しばらくの間


翔平は一言も発しなかった。



私は目線を

飲み干したばかりの
ココアの空き缶から離さずに





夜空に光る星達はまるで私と翔平を
見守るかのように優しく輝き

数日前の私達二人の
不思議な出会いを
このココアが温めてくれればいいのに…‥

と、願わずにはいられなかった。



私はとても弱虫だから。



――…「翔平。」



長い沈黙を破ったのは


意外にも私だった。





「ん?」


翔平は待ってたとばかりに

優しく微笑む。





「私、そろそろ帰ろうかな。」


――…きっと、
弱虫で素直じゃない私の心は
真逆の事を望んでいた。




「――‥どこに?」



「あのファイルの差出人のとこ!
友達って大事だよね。
本当、男一瞬ダチ一生って…
その通りだと思った!」



私の言葉の後
翔平は頑なに口をつぐんでしまった。


否定してくれる事を
期待していた私に嫌気がさす。






「じゃあ、
助けてくれてありがとう。」


私がベンチから立ち上がった時


翔平が紙切れを差し出した。




【club Dear princess SHO 】



真っ黒な紙に
浮かび上がるような白い文字



――ホストなんだ‥



「裏に連絡先あるし!
淋しくなったら
かけておいでよ。」





「――‥っ。
バカにしないでよ!!」




私は名刺を破り捨て、
早足で公園を後にした。





―――‥私は





お金で買う優しさなんていらない。