私は抵抗しなかった。
――…いや、
本当は安心していた。
だから、怒鳴る隼士の言葉すら
耳に響かなかったのかもしれない。
―――“バタンッ”…
私は結衣にひっぱられて
寛貴君の車の後部席に座った。
車が動き出す。
エントランスにいる
隼士が小さくなっていく。
――――……
「もう、大丈夫だからね。
安心していいよ。
こんなになるまで
ほっといてごめんね。
もっと早く助けられなくて…」
結衣の震えた声に
とても悲しい気持ちになった。
「あ…りがと…」
――――……
寛貴君が結衣の家まで送ってくれた。
「気をつけてね。
何かあったら連絡して。
アンナちゃん、
ゆっくり休ませてあげなよ。」
寛貴君が優しく笑う。
「うん、ありがと。」
結衣は別れを惜しむように
寛貴君の手に触れた。
―――――…