私は部屋に結衣と寛貴君を入れた。



「…何か飲む?」



寛貴君が顔の前で手を振る。



結衣と寛貴君は大きな紙袋を机に置いた。



結衣は目に涙をためながら
私を見つめた。



「―……アンナ。
辛いけど、これは問題なの。
アンナは隼士君の所有物じゃない。
このままじゃ……
アンナ、どうなるか分からない…」



結衣は必死に涙をこらえているようだ。



寛貴君が紙袋から
本、冊子、色んなものを出した。



「コレ…
聞いた事あるよね?
“ドメスティック・バイオレンス”。
“DV”って言うんだけど…」



本や冊子のタイトルは
“DVについて”…
“なぜDVをするのか”…
“DVへの対処法”…
“DV”と書かれている物ばかりだ。



「ねえ、二人共
何か勘違いしてない?
“DV”だなんて…
突然なに言い出すのよ。」



結衣が私の服を捲った。



私のお腹には
数えきれないほどのアザがあった。




「――…っ。
これ…隼士君にやられたんでしょう!?」



結衣の声が大きくなる。



「どうして、こんなになるまで
ほっといたのよ!
アンナ!!しっかりしてよ!」






私は両手で耳を塞いだ。





隼士が私に“DV”―…?




そんな事する訳ないじゃん。




「――…帰って。」




「帰ってよ!!」



――――……





二人が出ていった後、






私は大声で泣いた。




本当は気付いてた。




でも大好きな隼士のためなら
我慢できた。




どんなに殴られたって
どんなに蹴られたって
いくら血が出ようが
涙が出ようが、

後から優しく抱きしめてくれる
隼士が大好きだから
私はどんな事も受け止める。




優しい隼士が大好き。