「奈美も、もっとオシャレしてくればよかったのに~…―。」

バスに揺られていると紗英が言った。

「え~…?
だって、遊園地だよ~。
ジェットコースターとか沢山乗りたいじゃん。」


奈美は、紗英とは対称的に、シフォンのチュニックに、デニムのショートパンツ、歩きやすいようローヒールのブーツに、ミリタリー調のブルゾンという動き易さ重視のカジュアルな格好だった。

髪も、紗英みたいに巻いてはおらず、ストレートのままだ。

「でも、奈美らしいね。」

「でしょ?
私に紗英みたいな可愛らしい格好は似合わないって。」

「武彦君がスカートはいた子が好きって言ったら?」

「え!?
…はく…かも…。」

「奈美が制服以外でスカートはいてるとこ見てみた~い!
武彦君に頼んで行ってもらおうかな。」
紗英が悪戯っぽく笑った。

「ちょっ…
やめてよ~!!」

「アハハ。冗談冗談。」


そんな他愛ない会話を交わしていると、次のバス停に着いた。


ここで武彦と要が乗ってくる予定になっていた。


奈美は胸がドキドキと高鳴るのを感じた。

学校以外で武彦と会うのは初めてだ。

私服を見るのも…。

ああ。

やっぱりもうちょっとオシャレしてくれば良かった。

せめて、もうちょっと高いヒールのブーツとか…。



武彦と要がバスに乗ってきた。


「あっ、要~。」

紗英が可愛らしい声をあげた。

「お~。紗英。可愛い格好してんな。」
「えへへ。そう?」
紗英は満足そうだ。