「もうっ!紗英遅~いっ!!」


一条奈美は、小走りでこちらに駆けてくる桜井紗英に向かって言った。


「ごめんごめ~ん。
何着ていこうか迷っちゃって。」


紗英は可愛らしく顔の前で両手を合わせ、ウインクして見せた。


パッチリとした二重のうるうるしたチワワみたいな瞳に長い睫毛、ぷっくりした唇…。


そんな風にごめんって言われたら、大抵の男なら許しちゃうよな…。

女の私だって、ドキッとするくらいなんだから…。

と奈美は思った。


「でも、まだバス来る前でしょ?」

そう言いながら、紗英はベンチにすとんと腰を下ろした。


「そりゃそうだけど…。

てかさ、紗英、その格好何?」