目を覚まして、流れる涙もふかずに、ぼーっと先生との思い出を辿っていた。


映画を見た後は、先生の車でスーパーに買い物に行った。
晩御飯の材料を買って、先生の家に行った。
先生はハンバーグを作ってくれた。
味は覚えてない。すこし固かったような気がする。
一緒に片付けをして、そして同じ布団で眠った。
…初めての夜だった。



次の日の朝、どんな顔して先生に『おはよう』言えばいいのか分からなくて、布団かぶって寝たフリをしてたっけ。


『おーい、朋ちゃん!!いつまで寝てんの!!朝だよ!!』

『ちょっと、重たい!なに乗ってんの!』

『なーんだ起きてたんだ、早くシャワー浴びて服着ちゃいなよ?俺もう浴びたから』

『シャワーって…』

『浴びた方がいいよ?ほら早く』

『ちょっと、布団はがさないでよ!』

『えー、なんでぇ?』


そういう不安を感じ取ったみたいに、いつも以上におどけてた先生の事、愛しくて愛しくてたまらなかった。



一緒に朝ご飯を食べた。
先生は朝から部活、あたしも一緒に家を出た。

駅まで送った先生は耳元で『痛くなかった?』と聞いた。
『今度はやさしくするから』と言った。



今度っていつ?なんて聞ける訳もなく、ただ黙って頷いたの。
好きだったから。

その「今度」が10年後だって、あたしは先生を受け入れられる自信があったから。