水穂さんの代わりに、秀が、小さな声で言った。


「育てたのが、ヒトじゃなかったから」


「せいか~い」


歌うように水穂さんが言い、そして笑った。


「鬼の子がまともに育つのは、ヒトに育てられた時だけ。

あ、もちろん、モノノケが見えるヒト限定ね。

女の子に育てられればなおよし。

体力がなくて、弱ければ弱いほど良い。

これは僕の推測だけど、弱いものに育てられれば優しさを学ぶんだろうね。

だから紫乃に頼みたかったんだけど、君しかいなかったからなぁ」


「わかってるなら、なんで牢屋に鬼の子がいるんですか!

どうして、見えるヒトに預けにいかなかったんですか!」


「『約束』だよ」


今までとは違い、静かな声で水穂さんが言う。


「どんな!」


今にも水穂さんに掴みかかりそうな私の手を秀がぎゅっと握り、さっきと同じような小さな声で言った。

頭に上っていた血がさっと冷える。