私からお茶を受け取った月浦さんは、


「何のために私のところに来ようとしたのかはわかっています。

その話、秀君のいないところでしたいのですが、かまいませんか?」


と言った。

秀はきょとんとした顔をしていたが、すぐに


「僕カナ爺のところに行ってくる!」


と言って飛び出していった。


秀がふすまを閉めた瞬間、月浦さんの雰囲気が変わった気がした。

ピリリとした緊張感が走ったような、一気に部屋の温度が下がったような、そんな感じ。


「さて、聞きたいことがあるのでしょう?」


月浦さんは手にしていたお茶をコトリと机に置いて言った。


「牢屋にいる、鬼の子の、ことです」


なんだか緊張する。


「鬼の子の父親が、猫族の人だということは聞きました。

では、母親は誰なのですか?」


本当は、なんとなく予想出来ていた。

甚郎さんの、心底カラスを嫌っているような態度から。


「あれの母親は、カラスです」


何事もないように、あまりにあっさりと月浦さんは言った。

静かな口調だった。