◯教室、授業中
紗代の机には教科書、ノート、筆記用具がある
他の生徒も授業を受けている
【隣の席にいる金髪ヤンキーが、幼なじみの神谷悠人なのか。いまだに確認できていない。】
隣の席の悠人は机に突っ伏して寝ている
悠人を見る紗代
紗代(本当に悠人なのかな……)
悠人を見過ぎて「よそ見をするな」と先生から注意を受けてしまい、ぎくっとする紗代
小さな声で「すみません」と言う
【なぜなら、ヤンキーに話しかける勇気がないからだ。】
◯教室、休み時間
気だるげに座る悠人の席を3人のヤンキーが取り囲んでいる
以前見た時より子分が1人増えている
悠人が親分のような雰囲気
ヤンキーたちは悠人に対してペコペコ頭を下げている
教室内では異質に見られており、クラスメイトは離れて見てる
紗代は窓際で大袈裟に距離を取っている(悠人と取り巻きが怖い)
◯校舎の外、下校時間、夕方
悠人に向かって頭を下げるヤンキー4人を紗代が見かける
紗代は(また増えてる……)と思う
ヤンキーたちは「あざーっす」と「さーせん」を連発している
基本的にペコペコしている
悠人はだるそうでヤンキーたちを見ていない
紗代「聞けないよなぁ……」
紗代はヤンキーたちに気づかれないようにそーっと通り抜けて校門へ向かう
悠人はヤンキーたちを見ておらず、校門へ向かう紗代を目で追う
◯教室、朝
【そして、隣の席の神谷悠人が幼なじみの神谷悠人なのか確認できないまま、】
紗代は扉を開けて教室に入り、カバンを置く
悠人はいない
【彼は学校に来なくなってしまった。】
授業を受ける紗代
悠人の席は空席のまま
◯学校の保健室、午前中
保健室の椅子に座る紗代
少し熱がありぼーっとしている
保健室の先生(先生2)が体温計を持って立っている
先生2「土田さん、熱があるから早退した方がいいわ。お家の方に電話してくるわね。」
紗代「先生、待ってください!」
保健室の先生がドアへ向かうのを呼び止める紗代
保健室の先生が振り返る
紗代「うちの親、仕事なんで、自分で帰ります。」
先生2「大丈夫なの?」
紗代「まだ歩けます。待ってても来てもらえないんで。」
おどけたように笑う紗代
保健室の先生は心配そうな顔をする
保健の先生からカバンを受け取る
→先生に帰る準備してもらった
先生2「気をつけてね。」
紗代「ありがとうございました。」
保健室を出て、学校を出る
熱っぽいため俯き加減、少し頭痛がしており、頭を押さえる
◯通学路、早退のため下校、午前中
紗代「朝はなんともなかったのにな……」
人通りのある商店街をとぼとぼ歩く紗代
商店街を抜けて住宅街に入っていく
しばらく歩いていくと、遠くにしゃがんでいる悠人が見える
悠人の姿を目に留めてギクっとする紗代
足が止まる
紗代(神谷悠人だ……!!)
悠人の周りに取り巻きのヤンキーがいないか見回すが、それらしい人はいない
悠人は街路樹の近くにしゃがんでいる
街路樹の後ろに何かいるっぽい
悠人は紗代に気づいていない
紗代(こんなところで何してるんだろう……)
紗代は静かにゆっくり悠人に近づいていく
街路樹の影に子猫がいるのが見える
悠人は学校では見たこともないような笑顔で子猫を撫でていた
紗代に気づいた悠人が紗代の方を向く
→紗代にはこの動作がスローモーションに見える
紗代の視界が真っ暗になる
【私は見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。】
◯アパートの一室、悠人の部屋、昼
ベッドで横になる紗代
おでこにタオルがある
目を開けると、天井のシンプルな照明が見えてくる
視界がぼんやりして体がだるい、熱がある
悠人「大丈夫か?」
声がして驚いて顔を向ける紗代
悠人がキッチンから紗代の方へ歩いてくる
紗代「ひぃっ!」
悠人「変な声出すな。ほらよ。」
悠人は紗代のおでこに氷嚢を乗せる
ビビりながらもそのまま受け取る
悠人「体調が悪いなら休め。」
悠人は紗代の布団を掛け直す
紗代は金髪ヤンキーが悠人だと確信していないため困惑する
紗代「あの……ここは……どこなんですか?」
悠人は一瞬驚いた顔をして、その後吹き出す
くすくす笑いからそのうち声を出して大笑いする
笑いすぎて涙が出てしまい、悠人は涙を指で拭う
悠人「お前さ、本当にわかんねーの?ははは。」
頭の中に中学時代の悠人の笑顔が浮かび、目の前にいる悠人とリンクする
紗代は悠人の顔を見て泣きそうになる
【私は泣きそうになった。】
悠人は声を出して笑い続けている
【金髪なのも、声が低いのも、妙に色気があるのも違うけど、その屈託のない笑顔を私はよく知っていた。】
〇アパートの一室、悠人の部屋、昼(前話と同様)
紗代はタオルと氷嚢を手に持ってゆっくり体を起こす
悠人はそれに気づいて手伝ってくれる
紗代「本当に悠人なんだね……」
悠人「気づかねーのも無理はねーけどな。」
悠人はベッドの淵を背にして床に座る
紗代に背を向けて座っている
紗代からは悠人の横顔が見える
沈黙が5秒くらいある
悠人「親が離婚して、急に引っ越さなきゃいけなくなった。転校した先の中学がめちゃくちゃ荒れててさ。これはその結果。」
悠人は金髪の毛先を持ち上げる
悠人「転校してやられっぱなしのときはキツかったけど、お前に無視される方がキツいわ。」
紗代「仕方ないでしょ。全然違うんだから。」
悠人「まーな。」
俯く紗代
少しだけ沈黙の時間がある
悠人「なぁ、紗代?」
思わせぶりに悠人が振り返る
紗代は小さくビクッとする
中学時代とは違う悠人の色気を感じる
紗代(今まで名前で呼ばれてもなんとも思わなかったのに!どうしてそんなに優しく囁くのよ!)
悠人は紗代をじっと見つめてくる
紗代はドキドキしてくる
紗代(な、何!?なんなの!?)
見つめてくる悠人から目を逸らすことができない紗代
悠人はジリジリ紗代に近づいてくる
紗代(待って待って!この展開って!!?)
紗代は目をつぶってしまう
〇悠人の部屋、昼過ぎ
悠人「水飲むか?」
紗代「え!?あ、うん。」
悠人の声で目を開けた紗代
悠人は立ち上がってキッチンへ向かう
紗代(なんだびっくりした……いちいち色気を出さないでよ……)
悠人が冷蔵庫からペットボトルを取り出して紗代のところへ持ってくる
ペットボトルを開けてから紗代に手渡す悠人
紗代(いつも開けてくれるんだよね……)
小学生の時からペットボトルを飲むときは開けてから渡してくれたことを思い出す
◯(回想)第一話の回想シーンと同じ景色、小学生時代、公園のベンチ、夕方
・ベンチに並んで座る小学生時代の悠人と紗代
・二人の身長は同じくらい
・ペットボトルを開けてから紗代に渡す悠人
・「ありがとう、悠人」とにっこり笑って受け取る紗代
・遊んだ後に一緒にお茶飲んでるほのぼのした風景
(回想終了)
◯悠人の部屋、昼過ぎ
紗代はペットボトルの水を飲む
悠人はさっきと同じようにベッドの淵に背中を預けて床に座る
水を飲んだ紗代は悠人の部屋を眺める
部屋の中は少し散らかっている
部屋の中には漫画やゲーム機など悠人の物しかない
紗代(家族で住んでるわけじゃなさそうだよね)
紗代「ここに1人で住んでるの?」
悠人「あぁ。いつでも来ていいぞ。親いねーからさ。」
紗代(それってどういう意味!?)
紗代の顔が赤くなりタオルと氷嚢を顔に当てて顔を隠す
悠人は横目でちらりと紗代を見る
紗代は恥ずかしさを隠すために話題を変える
紗代「猫の世話をするから学校を休んでるの?」
悠人「ちげーよ。」
悠人は動揺する
紗代はヤンキーも動揺するんだと驚く
紗代「学校休んで何してるの?」
悠人「働いてんだよ。」
紗代「働いてるの!?」
紗代(てっきり遊んでるのかと思ってた。)
悠人「色々あんだよ。」
悠人は立ち上がってキッチンへ向かう
紗代は俯いて、母が言葉を濁していたことを思い出す
悠人は冷蔵庫を開けて中を見ている
悠人が働いていると聞いた紗代は、中学時代によくモデルになったらとか、芸能界に入ったらと言っていたことを思い出す
◯(回想)中学時代の下校、土手、夕方
・土手を歩く2人、菜の花が咲いている
・悠人は学ラン、紗代は制服
紗代「悠人はモデルになったら?芸能界とかも行けると思うよ~」
悠人「ははは。何言ってんだよ。俺は……」
(回想終了)
◯悠人の部屋、夕方
紗代「悠人、どうせならモデルとかやったら?」
乱暴に冷蔵庫の扉を閉まる音がする
紗代はビクッとする
部屋の空気が張り詰める
悠人「……お前もそういうこと言うのかよ。」
悠人の声が冷たい
悠人は部屋から出て行ってしまう
玄関の扉が勢いよく閉まり、紗代はビクッとする
部屋が静まり返る
紗代は俯く
紗代(怒らせちゃった……)
(何度も言ったことあるのに……)
中学時代のことは自分しか覚えていないんだと思って悲しくなる
◯悠人の部屋、夕方
紗代は壁掛け時計を見上げる
紗代(悠人が戻ってきたら帰ろう。悠人のおかげでだいぶ楽になったし。)
ベッドの近くに置かれたカバンを開ける
カバンの中を手で確認する①
→鍵を探している
紗代(ん?)
カバンの中を両手で確認する②
→鍵を探している
紗代(え?)
カバンの中を両手で確認する③
→鍵を探している
カバンの中を覗き込む
紗代(嘘でしょ!?)
カバンをひっくり返す
カバンの中身が床に散らばる
放心状態になる紗代
紗代(鍵忘れたぁぁぁぁ!)
白目になる紗代
〇悠人の部屋、外は暗くなり始めている
玄関の開く音がして悠人が帰ってくる
コンビニの袋を持っている
紗代「悠人ぉぉぉ!」
悠人「な、なんだよ……」
紗代は床に座り込んで半泣き、目が潤んでいる
悠人はギョッとして紗代を見る
紗代「もう少しだけここにいてもいい?」
悠人「ぉ?」
悠人には紗代が子猫に見えてしまう
ちょっとだけ照れる悠人
紗代「鍵、忘れてきちゃったの……」
悠人「ださ。」
悠人の顔が一瞬でヤンキーの顔になる
しゅんとしている紗代の頭に何本もの矢が刺さる
紗代「ゔぅ……」
何も言い返せない紗代
早退後、悠人がいなかった場合の想像をする
◯(紗代の想像)早退後、通学路、午前中
・学校から出た紗代は道端で倒れて魂が抜けていく
・人だかりができる
・救急車で運ばれる
・母が大慌てで帰宅「紗代ーーー!!」
(想像終了)
◯悠人の部屋、夜
紗代(悠人が助けてくれなかったら、酷いことになってた……)
どよーんとする紗代、床に正座している
悠人が紗代に近づいてコンビニの袋を差し出す
悠人「食うか?」
顔を上げる紗代
悠人から差し出された袋を覗き込む
袋の中にはみかんゼリーとプリンが入っている
紗代「みかんゼリーだぁ!」
悠人「まだ好きなのかよ。」
紗代「いいじゃん、べつに〜」
みかんゼリーを見て機嫌が急回復した紗代
悠人から袋を受け取ってみかんゼリーを取り出す
ゼリーの蓋を嬉しそうに開ける紗代
視線を感じて悠人の方を見る
紗代(どうしてそんな顔するのよ!)
悠人は優しく微笑んでいる
見守られていることに居心地の悪さを感じつつも、悠人が近くにいることは嬉しい紗代
小さくなってみかんゼリーを食べ始める
紗代は悠人の顔をチラリと見る
紗代「もう怒ってない?」
悠人もプリンを食べ始める
悠人「怒ってねーし。」
紗代(怒ってるよね〜)
紗代はみかんゼリーを黙々と食べる
悠人「お前に言われるとは思わなかった。」
紗代「昔から言ってたじゃん。」
悠人「そんなのには興味がない。俺は……」
悠人はプリンを食べて言葉を飲み込む
紗代からわざと視線を逸らす悠人
みかんゼリーを食べる紗代
・ ・ ・ !
空白の時間が3秒の後、ひらめく
紗代「あーーー!」
悠人「うるせーな。大声出すな。」
紗代(思い出した。私は大事な部分を忘れていた。悠人にモデルをやれだの芸能界行けだの言った後、悠人は必ず私に言っていた。)
◯(回想:第四話の回想シーンと同じ)中学時代の下校、土手、夕方
・土手を歩く2人、菜の花が咲いている
・悠人は学ラン、紗代は制服
紗代「悠人はモデルになったら?芸能界とかも行けると思うよ~」
悠人「ははは。何言ってんだよ。俺は……」
・中学生の悠人、爽やかでキラキラした笑顔を紗代に向ける
悠人「俺は獣医になりたいからさ。」
(回想終了)
◯悠人の部屋、夜
紗代(思い出した。悠人の夢は獣医だ。)
紗代は食べ終えたみかんゼリーのカップをテーブルに置く
紗代は悠人に向けて手を合わせる
紗代「ごめん、悠人!悠人は獣医さんになるんだよね。」
悠人は顔を背ける
悠人「別にいい。もう諦めたから。」
紗代「なんで!?」
悠人「さっき言ったろ?色々あんだよ。高校出たら働くって決めてる。」
紗代(それはそうかもしれないけど、悠人の夢はどうなるの?)
紗代は顔を背けている悠人を見つめる
悠人は視線を下げている
紗代には寂しそうに見える
紗代「諦めちゃダメだと思う。」
悠人「仕方ねーよ。」
紗代は両手でテーブルを叩く、ダンッ!
プリンとゼリーのカップが揺れる
悠人は驚いて紗代の方を向く
紗代「そんなことない!方法なんてある!えっと、ほら!夜間の大学とかあるでしょ?社会人の大学生だっているし、働きながら勉強する人は沢山いると思う。諦めちゃダメだよ!あんなに優しい顔でニコニコしながら子猫ちゃんをさ………っ!」
紗代が話している途中で悠人は右手で紗代の口を塞ぐ
目を見開く紗代
悠人「それ以上言うな。」
紗代はコクコクと頷く
脅しのような雰囲気だけど、悠人の顔は少し赤くなっている
悠人「やっぱお前がいる高校来てよかったわ。」
笑顔の悠人を見て紗代も嬉しくなる
紗代「同じ高校だと思わなかったよ。受験の時いなかったからさ。」
悠人「俺、推薦だから。」
紗代「へ!?」
余裕そうな表情の悠人
悠人「頑張れって言っただろ?」
紗代(言われた……あの時既に悠人は合格が決まってたってこと!?)
白目になる紗代
くすくす笑う悠人
悠人「せっかくお前と同じ高校にしたのに、通えないと意味ねーじゃん?だからこの部屋借りた。」
紗代(なんでそんなこと言うのよ。それじゃまるで……)
【会いたかったって言われてるみたいだ──】
顔が赤くなる紗代
恥ずかしくて顔を俯ける
悠人「でも同じクラスになれるとは思わなかった。席も隣だし。無視されて傷ついたけどな。ははは。」
悠人は笑いながら俯く紗代の頭をぽんぽんする
◯悠人の部屋、夜
紗代「ありがとう、悠人。助かったよ。」
悠人の部屋を出る紗代
アパートの階段を降りる
悠人が紗代の後ろを歩く
アパートの敷地の外に出ると、紗代は驚いて周囲を見回す
→知ってる場所だ!
悠人「お前ん家、そっち。」
悠人は紗代の家の方角を指差す
紗代は何も言えなくなる
恥ずかしさと悔しさが入り混じった表情
悠人「いつでも待ってるぞ。襲いに来てくれていいからな。」
紗代「何言ってんのよ!」
悠人をどつく紗代
悠人は大袈裟に痛がるふりをする
→悠人は中学時代のやり取りを思い出している
◯悠人の部屋から紗代の家に続く道、夜
紗代はドシンドシンと足音がするような歩き方をして家に帰る
紗代を見守る悠人が背後に見えている
◯紗代の家の前、夜
悠人のアパートから歩くと、すぐ家に着いてしまう
振り返ると悠人が笑いながら手を振っている
紗代「なんなのよ、もうっ!」
紗代は自宅の敷地に入っていく
家の明かりがついている→母が帰宅済み
紗代は玄関を勢いよく開けて家の中に入る
紗代「ただいまー!」
母のお帰りなさいの声が聞こえてくる
【悠人の部屋は、かつて悠人の家が建っていた場所に新しく建てられたあのアパートだった。】
◯悠人のアパート前、夜
悠人はため息をついて、振っていた手をおろす
紗代の家がある方向を見つめる
悠人「こっちの気も知らないで。どーしてくれんだよ、ったく……」
悠人はガシガシと頭を掻く
ポケットに手を突っ込んで急いで部屋に戻って行く
◯教室、紗代のクラス、朝
【あれからしばらく経ったある日──】(2週間後くらい)
教室の後ろの扉がガラガラと勢いよく開く
金髪ヤンキーの悠人が教室に入ってくる
教室がザワザワする
教室の中に鋭い視線を向ける悠人
紗代の隣の席にカバンを乱雑に置く
椅子にどかりと腰掛ける
紗代は悠人の姿を見て笑う
紗代「珍しいね。」
悠人「うるせー。」
悠人は紗代の方を向かずに答える
紗代は悠人を見ながらニコニコと笑っている
紗代(もう怖くない。金髪のヤンキーは悠人だから。)
◯教室、休み時間
【悠人には相変わらず取り巻きがいて、】
悠人の席に集まるヤンキー5人
紗代(前より増えてる……)
悠人に向かって頭を下げているヤンキーたち
紗代は以前より近くでその様子を見ている
◯教室、授業中
【喧嘩の噂も聞くけれど、】
授業中に悠人を見る紗代
悠人の手が傷だらけでギョッとする
悠人は紗代の視線に気づいてパンチの仕草をして笑う
紗代は眉間に皺を寄せる
【悠人に対するみんなの印象は変わっていった。】
黒板に書いていた先生が振り返る
先生「じゃ、この問題……悠人、解けるか?」
悠人「はい。」
悠人は黒板まで歩いていき、サラサラとチョークで答えを書く
教室の中がザワザワする
【悠人はどんな難解な問題もスラスラ解いてしまう。元々頭が良いことは知ってたけど、学校を休みまくってたからつまずいてもおかしくないのに、悠人には隙がなかった。】
紗代「話が違うよ……」
机に突っ伏して放心状態になる紗代
黒板から戻ってきた悠人が紗代に囁く
悠人「頑張れよ。」
紗代「はぁ……」
先生が黒板に問題を書く
「次、土田〜」という先生の声を聞いて、紗代はげんなりした顔で立ち上がる
悠人はそれを見て小さく吹き出す
◯体育館、体育の授業、午前中
バスケの試合をしている悠人とクラスメイトたち
【悠人はスポーツも万能だった。運動は得意じゃなかったはずなのに、ヤンキーになって体力が有り余っている悠人は、負け知らずだった。】
悠人が華麗にドリブルをする姿を見て、クラスメイトの女子たちから歓声が上がる
悠人がやたらとキラキラして見える
少女漫画のような雰囲気
【金髪のヤンキーなのに、キラキラしたイケメンオーラを放ち、黄色い歓声を受けていた。】
悠人が華麗にシュートを決めてキャーキャー言われているのを、紗代は他人事のように見ている
悠人は紗代だけを見ている
◯学校の廊下、昼
【当然悠人はモテはじめた。】
廊下で女子が噂話をしている
廊下を歩く紗代は噂話を耳にする
女A「今日の悠人くん見た?」
女B「見た!カッコよかった~!」
紗代は女子たちの前を通り過ぎる
【いろんな人から告白されているって聞くけど、悠人は振り続けているらしい。しかも辛辣な言葉を付け加えて。】
女C「2組の山下さん、神谷くんに告ったらしいよ。うざいって言われたって泣いてたって。」
女D「私もそれ聞いた!5組の斉藤さん、結構ひどいこと言われちゃったみたいでさ~」
悠人はカッコいいがやっぱりヤンキーなんだ、ヤンキーって怖いと話している
紗代は廊下を通り過ぎて教室に入っていく
◯教室、下校の時間、夕方
【悠人が人気になって嬉しいはずなのに、なぜか気分が晴れない。】
自分の席でノートや教科書をカバンに入れる紗代
少しだけ乱暴にカバンに筆箱を入れ、教室を出る
【私は自分の気持ちがよくわからなかった。】