永遠の愛なんて信じません!

○学校・教室(チアリーディングカフェ)

紗奈「え! なんで南沢先輩がここに?」

南沢「2年のチアリーディングカフェに1人可愛い子がいて、チョコバナナ渡すときに応援してくれるっていう噂を聞いたから、来てみたら紗奈ちゃんだった」

紗奈、顔を赤くする。

南沢「もう1回やって?」

紗奈「嫌です! 1回だけなんで!」

南沢「なんだ〜、もう1回聞きたかったなぁ」

南沢、紗奈の顔から足元まで全身を見る。

南沢「可愛い、似合ってる」

紗奈「(顔を真っ赤にしながら)やめてください! 褒めても何も出ませんからね!」

南沢「そういうところも可愛い」

紗奈、顔を真っ赤にして困った顔。

壮平、チアリーディングカフェに陽介と入る。

壮平、南沢に顔を赤らめた紗奈が接客している場面を目撃する。

壮平、南沢の元まで行き、

壮平「おい、なにしてんだよ」

南沢「よう! 壮平! お前も紗奈ちゃんに会いに来たのか?」

壮平「人の彼女にちょっかい出してんじゃねえよ! じろじろ体見やがって、この変態野郎!」

紗奈「ちょっと壮平! 先輩はそんなんじゃないから! やめて! ただチョコバナナ食べに来てくれただけ! ねぇ? 先輩!」

南沢「どうかな?」

紗奈「(困惑しながら)え?」

南沢「可愛い店員さんに応援されて元気でたよ。あ、応援されるの2回目だね。いつもありがとう。またね!」

南沢、紗奈に手を振って立ち上がる。壮平の耳元で、

南沢「安心しろ。チョコバナナ食べに来ただけだ」

南沢、壮平にニヤッと笑いかけ、チョコバナナを片手に持ちながら教室を出る。

壮平「あの野郎〜。変なことされてないか? 紗奈!」

紗奈「(苦笑いで)だから、大丈夫だって! あ、ここに座って!」

席に着く壮平と陽介。

紗奈「壮平たち、何食べる? これトッピング可愛いんだよ?」

いつもと雰囲気の違う、チアリーディング姿の可愛い紗奈。

壮平、紗奈のチアリーディング姿に照れて、

壮平「(ぶっきらぼうに)それでいい」

紗奈「陽介くんは?」

陽介「俺もそれ!」

紗奈「分かった! 待ってて!」

×  ×  ×
時間経過。

紗奈「はい、どうぞ〜」

紗奈、壮平と陽介にチョコバナナを手渡す。

壮平「さんきゅ」

陽介「ありがとう」

紗奈「どっちも恵が作ったんだよ〜、上手でしょ〜」

チョコバナナに星やハートの形が綺麗にトッピングされている。

紗奈「今、恵来るから待っててね! ごゆっくりどうぞ〜」

紗奈、ニコニコしながら去る。

壮平「やべ〜、可愛いー」

陽介「(苦笑いしながら)お前、デレデレだな」

×  ×  ×
時間経過。

恵と壮平と陽介で、席に座ってチョコバナナを食べている。

壮平「それにしても、繁盛してるな」

恵「気付いたら紗奈が看板娘になっちゃって……。口コミで、他校の男子が紗奈目当てに押し寄せてるみたい」

壮平、眉間に皺を寄せ、恵を睨む。

恵「言っとくけど、私のせいじゃないわよ!」

陽介「そうだそうだ、恵に当たるな〜!」

他校の男子生徒の元に、紗奈がチョコバナナを届けに行く。

紗奈「(控えめに微笑みながら)お待たせしました。キラキラチョコバナナです。今日も良い1日でありますように」

他校の男子生徒A「かわいー、やべー。」

他校の男子生徒B「彼氏いんのかな?」

他校の男子生徒C「てか、スタイル良すぎ!」

盛り上がる他校の男子生徒。

怒りの顔で睨む壮平。

陽介「てか、この席もそろそろ空けなきゃね、待ってる人たちいるもんね」

壮平「よけねぇ。紗奈が休憩入るまで、俺はずっとここにいる」

恵「そうしたら、もう1品注文してもらわないと」

壮平「ときめきバナナチョコ1本!」

恵「毎度あり〜!」

陽介「恵、商売上手〜♪」

×  ×  ×
時間経過。

紗奈、チョコバナナを壮平に持ってくる。

紗奈「はい、壮平! どうぞ! そんなにバナナ好きだったっけ?」

壮平「まぁな。てか、紗奈。そんなに愛想振り撒くんじゃねぇぞ。勘違いするやついるからな」

紗奈「もう壮平って昔から心配しすぎだよ! みんなチョコバナナが食べたいだけだから!」

恵・陽介・壮平M「(目は笑わないで微笑みながら)いや、あなたが鈍感すぎでは……?」

×  ×  ×
時間経過。

壮平「俺には“いい1日でありますように”っていってくんなかったー」

不貞腐れる壮平。

恵「まぁ、身内だからねぇ」

陽介「照れるよねぇ」

見合わせる恵と陽介。

他校の男子生徒D「すみません、彼氏いるんですか?」

紗奈「あ、えぇと……」

壮平、一瞬で紗奈の元に駆け寄り、

壮平「(胸を張りながら)俺が彼氏です」

他校の男子生徒D「あ、えと……、すみませんでした!」

他校の男子生徒、チョコバナナを持って立ち去る。

×  ×  ×
時間経過。

他校の男子生徒E「あの、連絡先、教えてもらってもいいですか?」

紗奈「あ、えぇと、その……」

壮平、一瞬で紗奈の元に駆け寄り、

壮平「この子は無理なので、俺で良ければ!」

他校の男子生徒E「あっ……。やっぱり大丈夫です、すみませんでした!」

他校の男子生徒、チョコバナナを持って立ち去る。

×  ×  ×
時間経過。

他校の男子生徒F「あの、一緒に写真撮ってもらってもいいですか?」

紗奈「……写真?」

他校の男子生徒F「はい! 可愛いので記念に撮りたくて!」

壮平、一瞬で紗奈の元に駆け寄り、

壮平「この子は写真NGなんですけど、俺でよければ」

困惑した他校の男子生徒に、壮平が肩を組みピースをする。その姿を紗奈が写真に撮る。

遠目でその場面を見ていた恵と陽介、

恵・陽介「いや、撮るんかい!!」

×  ×  ×
時間経過。

机に顔を伏せて、息を切らす壮平。

壮平「はー、はー、はー。俺、ディフェンス頑張った……」

陽介「お疲れ」

恵「青山くん、また手元のバナナなくなってるよ?」

壮平「渡辺の鬼!」

恵と陽介、大笑いする。

○学校・廊下・文化祭中

チアリーディング姿の紗奈と制服姿の壮平で文化祭を回っている。

紗奈「あー、なんで途中からあんなに混んできたんだう。しかも男子ばっかり。男子ってあんまり甘いもの好きじゃないイメージあるけど、実は好きなのかな?」

壮平「(紗奈を睨みながら)そうなんじゃない?」

紗奈「あ、確かに壮平もたくさん頼んでたもんね! 何本食べたの?」

壮平「5本」

紗奈「5本!? 一度にバナナそんなに食べれないよ! そんなに好きだったんだね」

壮平M「ちげーよ、紗奈のせいだよ!」

紗奈「はぁ〜、店番もう終わったし、あとは楽しむだけだ〜! 気が楽〜♪」

憂鬱そうな顔をする壮平。

紗奈「壮平は何時から劇なの?」

壮平「あぁ、えーと、14:00」

紗奈「暇だし、見に行こっかな!」

壮平「まじで見に来んな! 俺一瞬だし、ありきたりなつまんねー劇だぞ」

紗奈「はいはい」

廊下ですれ違った男子生徒たちが紗奈をまじまじと見て行く。

睨む壮平。

壮平「ちょっと教室に忘れ物、一瞬待ってて」

紗奈「あ、うん」

それぞれのクラスがお店や展示を出している。華やかな学校。

紗奈M「なんか楽しいな。次、どこ行こうかな」

壮平「お待たせ。これ着ろ」

壮平、自分のパーカーを紗奈の肩にかける。

紗奈「え?(にっこりしながら)ありがとう」

紗奈M「壮平の匂い」

紗奈、ブカブカのパーカーを上に着て、壮平と一緒に歩く。

紗奈「あ、クレープ食べたい!」

壮平「おう」

○学校・屋上・文化祭中

人のいない屋上で、焼きそばを食べる壮平とクレープを食べる紗奈。

紗奈「あんなにバナナ食べたのに、焼きそばも食べれるの?」

壮平「別腹だ」

あぐらをかいて、焼きそばを頬張る壮平。

紗奈「家で作る焼きそばより、買った焼きそばの方が美味しく感じるよね」

壮平「うん」

無言の2人。

壮平「……今日、可愛かった」

紗奈「あ、ありがとう」

紗奈、照れ笑いする。

壮平「でも、他のやつに紗奈の可愛い姿ジロジロ見られんのめっちゃ嫌で妬いた。誰にも見せたくないし、できるならずっと部屋に閉じ込めてたい。あー俺、器ちいせぇー」

壮平、紗奈の目を見つめ、

壮平「ずっと俺のそばにいてな?」

紗奈「うん! 壮平じゃなきゃ嫌だよ」

紗奈の口の横に生クリームがついている姿を見て、笑う壮平。

壮平「ここ、ついてんぞ」

紗奈「え? ここ?」

紗奈、口元に指をつける。

壮平「違う、反対」

壮平、舌で生クリームを舐める。

紗奈、ビクッとする。

壮平「あまっ」

壮平、もう一度紗奈の顔をじっと見つめ、口にキスをする。

紗奈「ここ、学校だよ?」

紗奈、顔を赤くして制止しようとする。

壮平「誰もいないだろ」

壮平、もう一度キスをしようとする。

壮平の電話が鳴り、壮平が舌打ちをしながら電話に出る。

壮平「もしもし。あぁ、もう? ……分かった」

電話を切る壮平。

壮平「紗奈、悪い。劇のリハーサルが入っちゃって、今から行ってきてもいいか?」

紗奈「もちろんだよ! 頑張ってね! いってらっしゃい!」

壮平「本当に悪い。他の男に連絡先聞かれても、教えるんじゃねーぞ! ずっと渡辺といろよ!」

紗奈「はい、はーい」

紗奈、手を振って見送る。キスされた口元を触り、顔を赤くして微笑む。

○学校・中庭・文化祭中

紗奈と恵、ベンチに座り、出店で買ったレモネードをストローで飲んでいる。

恵「青山くんの劇、楽しみだね。陽介は大道具係だから表には出ないみたいだけど」

紗奈「え? 見に行くの?」

恵「え? 逆に見に行かないの?」

紗奈「だって壮平、召使いの役で、出番一瞬だから見に来なくていいって言ってたよ!」

恵「何言ってんの? 青山くん、主人公の相手役の王子様だよ!」

紗奈「え!?」

恵「(ニヤニヤしながら)さては、照れて嘘ついたな……。これは見に行くしかないでしょう!」

○学校・体育館・文化祭中

暗い体育館。幕の閉まっているステージ。たくさん並べられたパイプ椅子には満席で客が埋まっている。

紗奈と恵、パイプ椅子に座っている。

恵「もうちょっとだね」

紗奈「うん。楽しみ」

「ブー」始まる音が鳴り、幕が開く。

お姫様役の可愛い女子生徒が立っている。

お姫様役「今日はパーティーだわ! 素敵な王子様に出会えるかしら!」

紗奈と恵、微笑みながら見ている。

×  ×  ×
時間経過。

剣を持った複数の敵が現れ、お姫様を囲う。

恵「(小声で)そろそろ青山くん出てくるかな?」

壮平、キラキラの王子様の衣装を着こなし、剣を持って登場する。

壮平「姫には指一本触れさせない!」

恵と紗奈、目を見合わせ、息を殺して笑う。

壮平「姫を返してもらおう!」

敵A「そうはさせない!」

壮平と敵役の生徒たちで、剣の戦いが始まる。

真剣な顔で見る紗奈。

そこに、遠くからお姫様を弓矢で狙う者の姿が見える。

壮平が気付き、

壮平「危ない!」

壮平がお姫様の元へ向かうが間に合わず、お姫様に弓が刺さってしまう。

悲しみと怒りに狂った壮平は、周囲の敵を全て倒し、お姫様の元へ向かい、倒れているお姫様を座って抱き抱える。

壮平「姫! 姫!」

紗奈、演技に見入って悲しそうな表情をしている。

壮平、観客に自分の頭しか見えないようにして、お姫様にキスをするふりをする。

紗奈、切ない表情をする。

お姫様が目を覚ます。

壮平「よかった! 俺は、姫がそばにいてくれれば、それだけでいい。他には何もいらない! 愛してる、姫」

感動的な音楽が流れて、幕が閉じる。

「パチパチパチ」周囲から大きな拍手が聞こえる。

観客A「めっちゃ面白かった〜」

観客B「てか、王子役かっこよすぎ!」

観客A「それ思った!」

恵と紗奈も拍手をする。

恵「青山くんって、ちゃんと演技できるんだね」

紗奈「(ぼーっとしながら)だねー」

○学校・教室・文化祭後の片付け(夕方)

紗奈M「文化祭は無事終わった」

文化祭実行委員「誰か手が空いている人ー! 1人、中庭に行ってゴミ捨て手伝ってきてくれないー?」

紗奈「はい! 私行きまーす!」

紗奈、中庭に向かう。

○学校・中庭・文化祭後の片付け中(夕方)

紗奈、重いゴミ袋を両手で持ち、歩いている。

壮平「紗奈!」

隣を見ると、壮平が紗奈のゴミ袋を持ち、ニカっと笑っている。

紗奈「……壮平。ありがとう」

壮平「いやー、疲れたな〜。クタクタだ〜」

紗奈「……そうだね」

壮平「腹もいっぱいだし、夜メシいらねぇな」

紗奈「……うん」

壮平「どうした? なんかあったか?」

紗奈「え? ……あー、ないない! なんか疲れて眠くなってきちゃった!」

壮平「そうか? だったら転ぶと危ないから、向こうで座って、お花紙外す簡単な作業してな?」

紗奈「うん、ありがとう……」

紗奈の後ろ姿を見つめる壮平。

○学校・中庭・文化祭後の休み明け・休み時間

テロップ「文化祭後の休み明け」

紗奈と恵、中庭の道を歩いている。

恵「移動教室めんどくさいねー」

紗奈「休み時間の10分で移動するって結構ハードだよね」

校舎の2階の窓から、

壮平「紗奈―!」

紗奈、上を見上げると窓から顔を出している壮平がいる。

周りにいた女子生徒たちが、

女子生徒A「え!? 王子じゃない?」

女子生徒B「王子だ! イケメンすぎる〜」

女子生徒C「紗奈って誰?」

周りを気にする紗奈。

紗奈「(小声で)ちょっ、何?」

壮平「今日、バイトないから一緒に帰ろー!」

紗奈「(口パクで)わかった」

紗奈、そっけなく足早にその場を去る。

後を追う恵。

壮平、頬杖をつき、紗奈を眺める。

○学校・階段(放課後)

紗奈M「壮平がバイト休みなの珍しいなぁ。学校から一緒に帰るのも久しぶりだな」

紗奈、2階から1階の下駄箱に向かって、階段を降りている。1階の遠くの廊下で、壮平と下級生の女子生徒が話している。

紗奈M「あ、また告白だ……」

紗奈、降りてきた階段をまた戻って上る。

紗奈M「壮平は今までもモテてきたけど、あの日の劇から更に拍車がかかった。同級生の女子だけじゃなくて、上級生からも下級生からも目をつけられるようになった。前から私たちは幼馴染でよく学校でも仲良くしていたからか、一緒にいても周囲からは付き合っているとはあまり認知されていないらしい」

紗奈、壮平に「やっぱり先に帰ってるねー!」とスマートフォンにメッセージを送る。

紗奈、遠回りをして下駄箱につき、1人で帰る。

○学校・下駄箱(放課後)

壮平、スマートフォンに送られた紗奈からのメッセージを見る。無表情で眺める。