「...おいっ」

詩織...

「おい!おい、亮!
聞いてんのかよ!?」
「えっ!?」
「えっ、じゃねーよ。
俺の話し、ちゃんと聞いてる?」
「あっ。わり。」

こいつはかなりの話し上手。
俺はそこまで話す方じゃないから、こいつといると飽きない。
ほんと、俺らは気が合うんだ。

「もー。何?考え事?めずらしー。」
「俺だって...
考え事ぐらいするし。」
「...そーだな。
いつでも相談乗るからな?」
「サンキュ」
「明日から高校だろー?」
「うん。それが?」
「新しい出会いもあるって!」

祐樹は多分、いや絶対に詩織の事を言ってる。
祐樹には全部おみとうしだな。

中幡 詩織(なかはた しおり)。
俺が愛した人の名前。
色が白くて。
少し赤らんだ頬。
大きな目に、すっと通った鼻。
長くて少し癖のある、柔らかな淡い栗色の髪。

みんなから、とても慕われて。

かすみそうが好きだったな。
花屋の前でかすみそうを手に取った詩織は、とてもキレイだった。

詩織の全てが好きだった。
詩織以上に好きになれる人なんて、愛せる人なんているだろうか?