キャロットナイト~その男、甘くて最強~

 翌日は昨日に輪をかけて、最悪だった。

 体育館裏で負けた不良が逆恨みから、私を拉致したからだ。

 「いたた……」

 「よう、気がついたか」

 昼休みに購買店にシャーペンの芯を買いに行こうとして、いきなりビリっときて……。

 「マスクと眼鏡とったら、すげぇ可愛い!このまま、トップに差し出すのは惜しいよな」

 不良たちが私を取り囲んでごちゃごちゃ言っている。

 手足は結束バンドで拘束されていた。

 口がいやに涼しいと思ったら、マスクが外され、素顔を晒されている。

 「なあ、あんた、トップの彼女にならね?いい思いできるぜ」

 「いや……!トップって、あんたたちの親分でしょ?子分を見れば親分の格がわかるもん」

 月城くんの子分の皆さんは、実にスマートだった。

 動きが洗練されていた。
 やっぱり、親分の月城くんの影響かな……。

 「そんなこと言っていいのかよ?『青鬼』」

 あ……!?

 「あんた中学3の時に親友から裏切られて、ハブられたんだろ?それでイジメグループとそいつらに加担した担任の女教師を、ブチキレて叩きのめして病院送り。そのせいで中学では「青鬼」と恐れられてさ」

 ああ、いやだ……。

 「その担任教師が校長の息子の婚約者だったから、事件はもみ消された。運が良いな、あんた」

 思い出したくない。

 「バラすぞ、月城に」

 私の肩が跳ね上がる。

 「俺らの言う通りにしないと」

 「しないと、なんだ?」

 その時、月城くんが助けに来てくれた。

 敵を倒す咲夜の強さと格好良さに、私はいつか自分も他人を助ける人間になりたいと思った。

 咲夜は私をマンションに連れて行った。

 咲夜は、私に手作りのキャロットスープをご馳走する。

 咲夜は母親がフランス人であること、そのことで小学校までイジメにあっていたこと、その経験をバネに裏番長になったことを話す。

 他人と違っていても目立っても、結構楽しく生きていける、という咲夜の言葉に私は救われる。

 スープと咲夜の話に、私の心も温まる。

 私は眼鏡などで顔を隠すことをやめた。

 咲夜は裏番長として私を支える。

 他の学生がイジメられない学校生活のために、私は自分がトップを目指す。

 ちなみに、ロワとはフランス語で王の意味だそうだ。