「巡回行くよ。しぃちゃん。」


「…はい。」


2ヶ月一緒にいれば、少しはこの山添樹という人物がどういう人物なのか判りそうなものだが――少なくとも、椎名は判ると思っていた――が、樹は想像以上に掴みにくい性格をしている。

先に言った、ギャップもそうだが、掴みにくい…つまり、行動が予測出来ないということは椎名の仕事を非常にやりにくいものにする。


「今日はどこへ…?」


「城南高校付近に。相変わらず若者が学校にも行かずフラフラしてるみたいだからねぇ。」


樹は年齢もよく判らない。

よく判らないと言うか、資料で23歳だということは判っているが、外見からはとてもそうは見えない。

十代後半で十分に通ってしまう容姿だ。

性格も、容姿もまるで18歳…高校生くらいで止まってしまっているかのように思う。


「しぃちゃんは高校生の時、どんな感じだったの?」


「俺は所謂、優等生でしたよ。」

厭味も込めて冗談混じりに言うと、樹による一人小芝居が始まってしまった。


「……言うねぇ。でも確かに優等生な感じはするけど。『椎名くん、学年トップなんて凄い!』『そんな、たまたまだよ。』とか言って爽やかな笑顔を振りまいて……」


「何なんですか、喧嘩売ってんですか?」


「別にぃ〜」


樹が意地悪く笑う。


「……自分が優等生じゃなかったからって。」


怒りを抑えて、ぼそりと呟く。
それに対して樹が反論しようと口を開きかけた、その時……


「せんぱーい!」


大声を発しながら、こちらに駆け寄って来る少年が1人。


「泰蔵……っ!」


泰蔵と呼ばれた少年は、駆け寄って来た勢いそのままに樹に飛び付いた。