「局長…!お、おはようございます!」


「おはようございます。」


「お前たちは…毎日毎日、本当によく飽きないな。」


かつて捜査官時代、その容姿と頭脳、そして犯人への容赦なき捜査・追跡……

そこから付いたあだ名が‘鬼人’――。


当然、検挙率は常にトップ。

そんな噂は伝説のように語り継がれている人物――八王子隼が椎名たち関東支局のボスである。


「樹、朝礼を始める。早く片付けろ。」


「はーい。」


ERSAには北海道、関東、関西、九州の4ヵ所に支局が存在し、さらに地区ごとに支部が存在する。


更にその支局、支部の中で細かな部署が設けられており、まだ2ヶ月の椎名はその全てを把握しきれていない。


椎名たちが所属するのは身体を張り、最前線での捜査を担当する捜査課だ。


八王子は関東支局局長であり、捜査課長でもある。


それは異例の人事らしいが不在の捜査課長に相応しい人間がいないと言うのだから仕方ない。


局長は誰かを待ってるんだ――…


課長不在について、初めて局長に話を聞いた日、そう直感した。


誰なのかは判らないが、局長はその人だけを待っている。


椎名にはそんな風に思えて仕方ないのだった……