だから、金城の話題は樹の前ではタブーなのだと椎名がERSA入って、樹と組むことになった時、局長が教えてくれた。
そう、それがたとえ、彼女が熟睡していたとしてもだ。
「少年少女連続失踪事件」
それが、金城が――当然、コンビを組んでいた樹も――追っていた事件。
事件当初、姿を消したのは家出なんてものは日常茶飯事の不良少年ばかりだった。
そのため、事件はただの家出とされ、捜査本部が設置されるわけでもなく、捜査らしい捜査はされていなかった。
それだけ家出の件数は多い。
しかし、夜の街を巡回するERSAはこの失踪をただの家出で片付けなかった。
「立て続けに5人ですよ。」
毎晩のように注意をしていた繁華街の若者が短期間で5人もいなくなった。
初めは家に帰ったのだと考えていたが、3人目がいなくなった時、念のために自宅に確認を取ったところ、その少女は帰っていなかった。
5人目の少年がいなくなった時、なかなか動こうとしない警察の代わりに金城と樹が周辺の聞き込みを開始したのだった。
聞き込みを繰り返すうち、少年が失踪前日に見知らぬ男と一緒にいたという目撃証言が出て来た。
その男と少年は2人で車に乗り込み、市街地へ向かったと言う。
しかし、得られた情報はここまでで、結局、少年を発見するまでには至らなかった。