「……よし!飲みに行こう!」


「はっ!?」


部屋を出たところで、樹がまるで良いことを思いついたように、ぽんっと手を叩いた。


「今怒られたばかりなのに?!」


とてもそんな気分じゃないと言う椎名を無理矢理、引きずって樹は意気揚々と歩き出した。


連れて行かれたのは、ガード下の焼き鳥屋だった。


この前、行きそびれた「良い店」だ。


居酒屋につくと、種田が既に座っていて、日本酒片手に椎名たちを待っていた。


「種田さんも……?」


種田が微笑んで頷く。


自分も振り回されているのにも関わらず、思わず「すみません」と口走る。


「椎名が謝ることじゃないさ。

もちろん、樹も。こうして飲めるのは俺にとって嬉しいことだからね。」


なんて良い人なんだろうか、と感激する椎名に早く座れと樹が促す。


「お前も苦労するなぁ。」と種田が椎名に酒を注ぐ。

最大5席の屋台に椎名たち以外の客はなく、ほぼ貸し切り状態だ。


こんな場所、よく見つけたな……と半ば関心しつつ、改めて、彼女は成人なのだと納得する。