「……」


怒鳴るわけでもなく、ただ黙っているだけの局長の視線が痛い。

……痛すぎる。


「……何が言いたいか判るか?」


『……』


樹も椎名も何も言えず黙り込んでいる。


「すみませんでした。」

軽率だったと、椎名は唇をかみ締めた。

「……結果的に、現場にいた3人は確保したものの、他に仲間がいなかったとは言い切れん。軽傷とはいえ、けが人も出ている。」

そのけが人とは俺のこと。…と、彼女が確保した売人のことだ。

「それに、相手が何を持っているかも判らないのに、むやみに突っ込むなんて馬鹿者のすることだ。違うかい?」

言葉もない。

……反論なんて、できるわけもない。


「上司がしっかりしてないからじゃないのか?」


樹は、そ知らぬ顔をして、ふてくされている。


「今回、派手に動いたことで、今後の捜査にも影響が出てくるとみていいだろう。相手も警戒してしばらくは動かない可能性もある。

そうするとこちらも手の出しようがなくなるのだよ。言っている意味が分かるね?」


『……はい。』


親が子を叱るような、この室長の怒り方に弱いのはどうやら俺だけではないらしい。

彼女も渋々ながら、素直な返事を返す。