今日もこのドアが突然開かれる……。

そしてまたあの男がやってきて――。


……止めよう。


考えただけで寒気が、虫酸が走る。

あの男はノックなどと紳士的な行動はしない。

それが余計に恐怖感を煽っているということをあの男は分かっていて、敢えてそうしているに違いない。

緊張を強いられた眠りでは十分な睡眠など取れる筈がなく、最後に安心して眠ったのは、一体いつだったか思い出せない…。

果てしない程遠い昔のような気がする。

昼間、太陽の下にいるときのあの世界と、その太陽がまた昇って来るまでのこの夜の世界はまるで別世界だ。

どちらも夢のような世界……。

ただし、陽のないこちらの世界は「悪夢」。


「夢ならまだマシか…。」

思わずこぼした弱音。

拾ってくれる誰かなどいるはずないのに…。

足音が近づいてくる。

あの男だ。

反射的に身がすくむ。

それは「悪夢」の始まる足音。

そう、これは悪夢。

いつか覚めるはずの悪夢なのだ。

そう自分に言い聞かせ、泣きたくなる衝動を必死で押さえつけた。


「さぁ、今日は何をして遊ぼうか?」


男が嫌らしく微笑む。

そうして今日も悪夢の中へ引きずり込まれていくのであった……