北極海は想像していた程寒くもなく、吹雪が吹き荒れる様な事もなく晴天で少なからず私達は驚いた。

それよりももっと驚いた事は、北極海の氷の薄さだった。


「そんなに寒くないわね」

「そうだね」

氷の端に立って、私達は周囲を見渡した。


「あ、美空そこ!!
余りギリギリの所まで行くと、氷が割れるよ」

それにしても…
テレビで見た事はあったけど、こんなに酷い常態だとは思わなかった。

こんな常態にも関わらず、薄くなった氷の下では、海底資源を巡り争いが生じているという…


「始めるよ。
美空、私がどんな常態になっても、絶対に止めたりしないでよ」

「穂波…」


私は目を閉じると、精神を集中した。

そして、自分の両親や友達、東京の光景や出会った人達の事を思った。


絶対に人類を滅ぼさせはしない――


.