一目惚れ、だった。

『あ、わりぃ。』


「…ねぇ、名前何て読むの?」

思わず話し掛けていた。












―…一瞬で、奪われた。










*ライズ*









―あれから2年、中3の春。

「依飛(イト)依飛依飛依飛依――飛――!」

「…何?みゆ」



わたしは2年前の入学式、声をかけた少年・松山 依飛(マツヤマ イト)に恋をしていた。



「英語の課題提出期限一週間過ぎてたー」

「またかよ」

呆れながらも筆箱からペンを取り出す依飛。

「はー…しゃーねぇ教えてやるよ」

「やったぁ!!ありがとう依飛っ」



今のわたしの席は依飛のすぐ後ろ。
椅子に座った依飛がこちらに体を向ける。

「で、どこだよわかんないの」

「こことこことこことここ?つーか全部?」

「は!?マジで言っちゃってる!!?」

「…うん」


ため息をつきながらもシャープペンをノックして芯を出す依飛。


そんなところが、堪らなく、すき。

「そーいやーみゆ、お前また今日告られたんだって?」

「へ?あぁ、うん。お断りしたけど」

ノートを準備しながら依飛の質問に答える。

え、なになに
もしかしてヤキモチ?
だったらかなり嬉しいのにっ

「み…っ三橋(ミハシ)さんっ」
声のした方に視線をやると、そこには瓶底メガネもとい同じクラスの丸越(マルコシ)。

「あのっ日直日誌…っ」

…あ、忘れてた。今日日直だった。
ううわしかも丸越と…
相手が依飛ならいいのになー
…面倒くさいな

「…丸越くん」
「ははははいぃっ!」

「ごめんね。わたし今ちょっと大変で…日誌書いて出しといてもらえるかなぁ…?」

目は若干潤ませて上目遣い。手は口元に少し添える。さぁどうだ丸越!!書いて!!面倒くさいから!!

「はっはいぃ―――っ!」

真っ赤になったかと思うと凄まじい速さで走ってどこかに行ってしまった。
へへーんやったねっ

「~~っぶっははは!!おー前最悪!!丸越超ー可哀相!!」

丸越が去った拍子に堪えていた笑いが大爆笑に変わった依飛。
それで大爆笑してる依飛も結構酷いと思うんだけど…

「はーお前はほんと男を陥れながら生きてるよな」
「あんたは女を弄びながら生きてるよね」

ワックスでセットされた黒髪に整った顔立ち。182cmの長身に程よく筋肉のついた体つき。

「うっせー魔性」
「色魔に言われたくないね」

いつもこんな感じのやり取り。
こんな会話でもわたしにとっては大切。

「どっこいどっこいだよ」
「どんぐりの背くらべ」

そう言いながら机の横から顔をだしたのは敦子(アツコ)とひよ。
「「………。」」
わたしと依飛は顔を見合わせ、にやりと笑った。

「ひよ、あんたまた背縮んだんじゃない?」
「ぴよ、お前ちっさ過ぎて視界に入ってこねぇ」

こういう時だけ結託してひよをいじるわたしと依飛。


「ねぇ!二人して酷いよねぇ!!?」

私と依飛の言葉にショックを受けながら敦子に助けを求めるひよ。


「はいはい取り合えずみゆ、あんたは早く課題片付けな。」
そんなひよは無視して、いつも的確かつかなり痛い所につっこんでくる敦子。



そんな、いつもの光景。

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