「お前…変わってるな」

武蔵は黒板を消しながら日美子に言った。

「え、どこが?」

「……別に」

武蔵は自分を恐れない日美子をひどく珍しく思った。

と、同時に浮かぶ興味。

「なぁ、えっと……」

「山田日美子だよ」

「日美子か。なぁ、日美子…。俺と付き合わねぇ?」

武蔵は日美子にそう告げると腰を屈め、日美子にキスをした。

「宮本くん……」

「なぁ、付き合おうぜ?」

武蔵と日美子はじっ、と見つめ合った。

「宮本くん……」

「ん?」

「…全然萌えない」

「…………は!?」

日美子はそう言うと残念そうな顔をして武蔵から目を反らした。
武蔵はというと、驚きで気絶寸前だ。

「でも、板垣君にしたキスはめちゃ萌えだったよ!」

一気に興奮モードになった日美子は武蔵にキラキラとした視線を送る。

「目の前であんな萌え見たの初めて!やっぱり生はちがうな!!」

「萌えない…萌えない…」

夕暮れの教室には生の萌えに悶える日美子と白目を向いてぶつぶつと「萌えない」を呟く武蔵の姿があったのだった……。