「あ、宮本君」

日美子が膝から血を流して立っていた。
その姿に驚いた武蔵は慌ててベットから降り、日美子の手を引き、イスに座らせた。

「走ってたらね、転んじゃった」

ニコニコしながら言う日美子の顔には武蔵を恐れている感は微塵にも感じられない。

「とろいな」

「とろくないもん」

口を尖らせた日美子に武蔵は少しドキッとした。

「へぇ。宮本君て器用なんだね」

テキパキと日美子の膝の治療をする武蔵を見て日美子は感心したように言った。

「黙ってろ」

キツく言ったつもりが、日美子はさらにニコニコしている。

…調子、狂う。

武蔵の本音だった。


「なぁ、お前さ…」

「ん?」

武蔵はさきほど考えていた事を日美子に言おうとしていた。

「もしかして…男の恋愛にしか興味無ぇの?」

「え?」

「いや、普通の男女の恋愛より男同士の恋愛の方にしか興味無いのかなって」

そう言われた日美子は黙り込んでしまった。