ピーッ!!

ホイッスルが鳴ると武蔵は勢いよくボールを蹴り、相手ゴール目指して走り出した。
あまりの速さに誰も着いていけない。

そして、遂に武蔵は相手ゴールの前。
キーパーの男子は顔を引き攣らせ、武蔵に怯えていた。

「オラッ!!」

武蔵が力一杯蹴ったボールはキーパーの顔のスレスレを通り、見事ゴール。
キーパーはへにゃへにゃと腰を抜かしたのかその場に座り込んでしまった。

「おい!何で宮本、あんなに機嫌が悪いんだ?」

「知らねぇよ!関わったら厄介だからソッとしとこう」

がヒソヒソと話している声が武蔵の耳に入ったのか、武蔵はその男子をギロリと蛇のような目で睨んだ。

その時、

「日美子!頑張って!」

女子の声が武蔵の耳に飛び込んで来た。

「日美子…?」

武蔵は顔を引き攣らせ、声のした方を見た。
するとそこには一生懸命走る日美子の姿。
とそれを応援する女子。

どうやら女子は持久走らしい。

「山田って変わってるよな」

いつの間にいたのか武蔵の横で信長が言う。
武蔵は肩をビクッとさせ、信長を睨んだ。

「あ?」

「いや、山田日美子は変わってるなぁって」

信長はジッと日美子を見つめる。