部屋に入ると、そのまま電気もつけずに窓際の壁にもたれるようにして座り込んだ。




何も考えられなくなっていた。




別にケンシローが浮気したとかそんな訳でもなかったが…



さっきの光景がマリネの瞼の奥から…頭の中から消えることはなかった。






約束の時間に間に合わなかったのは自分のせいだとも分かってはいても……


ケンシローが人気があるのも知っていたし…それでも…


ケンシローは自分だけを見てくれていると信じていても…






なぜか…涙が止まらない。






ーーなんで…こんなに悲しいんだろ…



ーーなんで…こんなに苦しいの…



ーー逢いたいのに…



ーー逢いたくない…



ーーアタシ…ケンシローを信じてる…



ーー信じていい…



ーーどんな顔して逢えばいい…








あたし…

どうしたら…

いいの…








ーー11時30分…



ケンシローが帰って来てアタシの部屋の窓を叩いた。




「マリネまだ起きとるんか」