【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

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「ふう……。なんか緊張してきた」 

 今日は翡翠さんと付き合って六ヶ月の記念日で、翡翠さんとこれから食事をすることになっている。
 翡翠さんと付き合ってもう六ヶ月だなんて、時が早すぎる。 翡翠さんと出会ったのだって、まだ昨日のことみたいなのに。
 
 近くにある鏡で髪の毛を整えていると、後ろから「豊佳」と名前を呼ばれる。
 すぐに振り返ると、デニムのジャケットを着た翡翠さんが立っていた。

「翡翠さん」

「遅くなってごめん、ちょっと用事があって遅くなった」

「ううん、大丈夫」

 翡翠さんと手を繋いで歩き出すと、翡翠さんは「今日の豊佳もかわいいな」と褒めてくれる。

「え、本当に?」

「今日の服新しいヤツ?」

「実は……うん、そうなんだ」

 実は今日のデートのために新しいワンピースを新調したのだが、褒めてもらえたので嬉しいと思えた。

「似合ってる」

「本当に? 嬉しい、ありがとう」

 翡翠さんに褒めてもらえることは、やっぱり嬉しい。気合を入れてオシャレしてきた甲斐があった。

「豊佳はやっぱりワンピースが似合うよな」

「ええ、本当?」

「本当。 豊佳のワンピース姿、俺は好きだけど」

 私はあまりにも嬉しくて「ありがとう」と微笑んだ。

「翡翠さんって、本当に褒めるのが上手だね」

「……そうか?」

「そうだよ。私はいつも翡翠さんに褒めてもらってばかりで、申し訳ないもん」

 翡翠さんは「豊佳がかわいいから、かわいいって言ってるだけだ」と言葉をくれる。