【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

* * *



「もしもし……烏丸さん?」

 私は烏丸さんから掛かってきた電話に出た。

「豊佳、今って何してる?」

「えっ、今ですか?」

 あの日、私は烏丸さんから連絡先を交換してほしいと言われ、連絡先を交換したのだった。

「時間あるなら、ご飯行かない?」

「えっ。ご飯……?」

 連絡先を交換してから、烏丸さんはしょっちゅう私に連絡をしてくれる。

「そう。焼肉食べに行かない?」

「焼肉?」

「そう。行きたい焼肉屋があるんだよね」

 烏丸さんからご飯を食べに行こうと誘われた私は、どうするかを迷ったが、その誘いに乗ることにした。

「行きます。どこで待ち合わせしますか?」 
 
「俺車だから迎えに行く。 どこにいる?」

 私は「今駅の裏のロータリー付近に、いますけど……」と答えると、烏丸さんは「わかった。十分で着くからそこで待ってて」と電話を切った。

「……焼肉、か」

 これはデートと言っていいのだろうか。 ハンバーグを食べさせてもらった日から早三週間が経ったけど、烏丸さんからいつも連絡をしてくれる。
 こうやってご飯に誘ってくれたり、その日あった出来事とかを話してくれる。
 私を元気付けてくれる、まるで太陽みたいな人だ。 

「俺のこと好きになりなよ」

 烏丸さんにあの時そう言われたけど、恋をすることに臆病になってしまっている。
 だけど烏丸さんは、そんな私にいつも優しく接してくれるから、なんだか安心してしまう自分もいる。