【完結】失恋したら有名シェフが私を溺愛包囲網で包み込みます。

    

 それから三年後、春ーーー。


「翡翠、二号店開店、おめでとう」

「ありがとう。豊佳のおかげだよ」

「何言ってるの。翡翠の頑張りのおかげでしょ」

 レストラン【希望の丘】は、晴れて二号店を開店させた。

 私たちが結婚して一年後の春に行われた洋食レストランの日本大会で、なんと希望の丘のハンバーグが、初の金賞を獲得したのだった。
 そう、日本の洋食レストランの中で一位になったのだ。 こんな栄光は初めてで、翡翠自身もとても嬉しいのか金賞を取ったと連絡を受けた時、泣いていた。

 私もあまりの嬉しさに一緒に泣いてしまったけど、その嬉しさを共有出来たことは何よりの誇りだった。
 そのおかげもあってか、従業員の数もかなり増えた。 そして二年後の今日、新たに希望の丘は二号店を開店させることが出来たのだった。

「翡翠、本当に良かったね」

「ああ。親父も大喜びだよ」

「良かったじゃん」

「俺より多分……親父のが喜んでるかもな」

 二号店を開店させたことで、お義父さんも安心したのではないかと思う。
 だって翡翠のおじいちゃんから受け継がれたハンバーグが、最高の金賞を取ったんだもん。
 そりゃあ嬉しいに決まってるし、誇りになるのは当たり前だ。

「烏丸家の、大切な宝物がまた増えたね」

「そうだな」

「翡翠、本当に一号店、早坂くんに任せて良かったの?」

 翡翠は一号店を、当時学生バイトとして働いていた早坂くんに任せることにしたのだった。
 もちろん、シェフは早坂くんだ。