僕より大きな物を背負っている君へ


「まおり~!会いたかったよ~」と言いながらまおりちゃんに抱きつく。

連くんだ。

「どうしたの?連」とまおりちゃんが聞く。

「いや~なんか部屋で友達と遊んでたらなんか会いたくなって来ちゃった!」

はぁ…それはそれは…ご立派な彼氏発言だこと。

「そういえばさ、さっき誰かと話してなかった?」

やばっ…と呟く。両手を口にあてる。

「え?誰もいないよ。連の変なの!」とまおりちゃんは、からかうように連くんに言った。

「そうだよな!多分横の部屋の人の声かな?」と連くんは、首を傾げて言う。

「絶対そうだよ」

「そうだよな。じゃあまおり、おやすみ!」

「おやすみ」

         ♢

連くんが部屋を出た一分後位にまおりちゃんが…

「もういいよ」と言う。

「びっくりしたね。急に連くんが来るなんて」

「私もびっくりした」
すると…急にドアが開く。

あっ…やばい。と思ったとおり時にはもう遅い…と…思っていた。

「どうしたの二人とも。そんな顔して」

「あ~なんだ咲瑛達か~びっくりした~」 

「え?なになに?こっちのほうがびっくりなんだが」と優雅さんが言う。

「まぁ…それは後でゆっくり話すから今日のとこは、お開きにしない?」とまおりちゃんが言う。

「そうだな~あんま遊べてないけど…しかたないか!」と矢島が言う。

「じゃあ今日は…解散!」

まおりちゃんがそう言って…俺達はまおりちゃん達の部屋をあとにした。

そう言って部屋を出た。

          ♢

「楽しかったな~」と矢島が言う。

「そうだな。あんま遊べてないけど…花都は?」と聞く。花都も何だかんだ楽しかったらしい。

「お前ら、布団敷くぞー」

「おー」と矢島が言い、花都は、拳を天井に突き上げた。

三人分の布団を敷き矢島と花都が布団に潜る。

「電気けすぞー」と言って、俺は電気を消す。

「おやすみ~」と矢島が言う。

「おやすみ」そう言って、目を閉じた。
三十分がたった。

全く眠れない。どうしたら寝れる?と考えていたら。

『こんこんこん』とドアがなった。

「ん?こんな時間にだれだ?」

ゆっくりドアを開けるとまおりちゃんがいた。

「やっほ…寝れなくてなんか来ちゃった」

「あっ…ほんと?実は俺もなんだ…」

「…入る?」と聞いたら「うん、入る」と言って、俺達の部屋に招待した。

奥の夜景が見える席に二人で座る。

「綺麗だね」まおりちゃんがそう言う。

「うん…綺麗」と返した。

「このまま時間が止まったらこの景色をずっと、見られるのに」と呟く。

「そうだね」と、まおりちゃんが言った。

「………」

「………」

「明日は…班別研修よろしくね」

「なに?急に改まっちゃって」そう言ってふふっと笑う。そして…

「よろしく」と満面の笑みでまおりちゃんは、言った。

まおりちゃんは、心配性だ。

彼氏でもない俺をこんなに心配して、くれるのだから。

「じゃあそろそろ…」

「そうだね。じゃあ…」


「おやすみ。」


声を合わせてそう言った。

まおりちゃんは、部屋に帰って行った。

そして、深い深い夜の中で眠る俺達だった。
「ここ…どこだ?」真っ暗の空間をただ真っ直ぐ進む。するとそこに…

「ま…まおりちゃん?」

まおりちゃんが背を向け、立っていた。

まおりちゃんが前を向いたまま、顔を少し見せるようにして、口を動かした。


「…春遠くん…私…言いたい事があるの…」


その言葉は、俺を絶望に…そして、現実に導いた



「大っ嫌い」



「…まおりちゃんっ!」そう叫びながら、起き上がり、手を伸ばす。

布団に入ったまま、下を見て、右手を顔にこべりつけて、目を閉じる。

「なんなんだよ…」

まおりちゃんは、俺にこれっぽっちも興味なんてないんだ。そう…興味なんて…

「結局…一人か…」

そう呟き、二人を起こして、朝飯までに準備をする。

「お~い、起きろ~」

「ん~、あと五分~…」

「はぁ…」と言って、無理矢理起こした。

「さーせん!さーせん!起きますぅ~」

矢島は、朝に弱い。

…さっきの夢の事は、忘れよう…
「はぁ~ねみ~」自分の目を擦りながら矢島がそう言う。

「春遠は、眠くねーの?」両手を自分の後頭部に当てながらいう。

「今日は…その…眠くない…」そりゃあんな悪夢見たら、眠気も吹っ飛ぶだろ。

「そうか~珍しく眠くないんだな」

「なんかあった?」全く…変に鋭いな。

「なんもねぇ~よ。ほら行くぞ~」そう言って走る。

「お~い、待てよ~」とゆっくり追ってくる矢島たちを置いて走った。

          ♢

宴会場に着き、色んな生徒が座っている。
まおりちゃんも座っていた…

目を合わせないように自分の席に行こうとしたが…

「やっほ~春遠!おっはよ!時間あるし、ちょっと話そうよ!」と咲瑛さんが声をかけてきた。

今は話す気分じゃないからすぐにいいわけを考えて言った。

「ご…ごめん…他の男子待ってるからいくね…」

そう言ってその場を離れた。

「ん~?なんか春遠おかしくない?別人みたいに変わっちゃったね」

「春遠くん…大丈夫かな…」

「なんか言った?まおり?」

「ううん、何でも」
ぼーっと天井を、見つめる。

「今日…班別研修か~」

上手くいく気がしない。

「は~ると!先に行くなよ~」

矢島と花都がきた。

「別…先に行っても行き先は、一緒だろ?」

「まぁ…そうだけどさ~まぁいいや。また後で」

いつもご飯を楽しみとする、矢島が変だな。

やっぱり俺の異変に気づいてんのかな~

『えー、それでは、全員揃ったのでいただきますを言おうと思います』

やっと始まる。

『手を合わせて…』

「いただきまーす!」

みんなが美味しいご飯を食べる。

「サンドイッチうま!」

「えー!私このパン好きかも!」

はぁ…うるせぇ…食欲が湧かない。

いや、流石に心の中でも『うるせぇ』はだめか。

また天井を見上げる。

目の前のスープをスプーンでクルクルしてたら、
「お~い大丈夫ですか~?」と先生が顔を覗かせてきた。

「大丈夫ですよ」

「ほんとに?体調悪かったらすぐに先生に言って下さいよ?」

「は~い」

「…そういえば昨日もしんどそうでしたね」
気付いたか。と心の中で呟く。

「本当に体調悪かったら言って下さいね?」と先生は、優しく言った。

「…はい」

そして俺は、サンドイッチを口に突っ込んだ。

          ♢

「ごちそうさまでしたー!」

手を合わせ、みんなでそう言う。

「さぁ、部屋戻って荷物とるか」とボソッと言った。

「一緒に行こーぜ!」

後ろから来た手が俺の肩をぐっと抱いた。

「矢島かよ」

「’’矢島かよ’’とは、なんだ’’矢島かよ’’とは!」

「はいはいすんませんでしたー」

手を振りほどき走る。

「あっ!待てー!」

矢島の後ろに花都がついて行く。

ほんと、バカで面白い奴
部屋に戻り準備していた荷物を持ち部屋を出る。

「準備できたかー?」

「おう!バッチリよ!」と矢島の元気で自信満々な声で言うが…

「あのタオルだ~れのだ」

机の上に置かれたタオルを指さす。

「あれ?いっけね!俺のだ~あははは」

「笑い事じゃねーし。ちゃんとしろ」

「すんません」としょんぼりした声で言う。

「ほら、修学旅行だぞ?元気出していけー」

そう言うと笑顔満開で…

「おう!」と矢島が言った。

そして最終チェックを終え、俺達は、一晩過ごした部屋を後にした。

          ♢

一日お世話になったホテルの人にお礼を言って…各クラスのバスに乗り込む。

「よっしゃー!今日は班別研修だ!」と男子クラスメイトが叫ぶと…

「その前に!千羽鶴の受け渡しがありますよ!
式の時は、学ランを着て出るんですよ!」と先生の大きな声が聞こえた。
「他のみんなも、班別研修だからといって気を緩めては、ダメですよ!」

クラス全員声を合わせ「は~い」と言う。

『それでは、出発します』

バスドライバーの人がそう言った瞬間、前の席がグルンと回った。

「ねぇ!なにする?」咲瑛さんがワクワクした表情で、言った。

「なにするって言ってもな~」と腕を組み矢島が言う。

「じゃ…じゃあ!今の所で一番いい三年生の思い出言い合おうよ!」と優雅さんが言う。

「じゃあ!俺から!」と矢島が元気の良く言う。

「えっと~そうだな…春遠がジャンケンで勝ってこのグループが出来たこと!」

「おぉ~いいじゃんいいじゃん!」と咲瑛さんが言う、その勢いで。

「私はねぇ~花都とか、春遠とか、矢島とか、優雅とか、まおりに会えたことかな~」

「みんなに会えてめっちゃ楽しいし、こうやって喋れてるのもすごく嬉しい!」