僕より大きな物を背負っている君へ

自由時間が終わり、全員バスに戻った。

「あ~疲れた~」と咲瑛さんが言うと。

「あと水族館だからかんばろ?」と優雅さんが言った。

「よしっ!かんばろ!」と気合いを入れて言った。

そして当たり前かのように席を後ろに向けている。

「何する~?さすがにそろそろカードゲーム以外したいよね」とまおりちゃんが言う。

「あっ!そうだ!さっき不思議な事があってさ!」と矢島がいう。

何かあったっけな~と考えている間に矢島が口に出した。

「集合写真撮った後、俺ら三人で集まったんだけど凍宮がいて、大声で呼ぼうとしたら、なんか春遠が急に止めてきてさ~。結局なんだったの?」

何で言った…言わなくてもいいだろ、それ。
と言ってやりたかった。

「春遠何でなの?」と咲瑛さんがいう。やめろ。

「どうして?」と優雅さんが言う。うるさい。

「何で止めたんだよ~、四人で回った方が楽しいだろ~!」と矢島が言う。黙れ黙れ。

深く俯き頭を抱えた。

何でそんなに質問してくるだよ…黙っててくれよ…と心の中で言った。

でも一人だけ、たった一人だけ、俺に責めて質問をしてこなかった子がいた。
「春遠…くん?大丈夫?具合悪い?」
と、優しく声をかけてくれた。

思わず顔をあげてしまった。

「いや…具合は、悪くない。その…えと…眠かっただけ…なんだ…」

「なんだ~眠かっただけか~。で、さっき話してた事なんだけど…」と矢島が喋っていると、遮るようにまおりちゃんが。

「しりとりしよ!」と言った。

「お!いいじゃんしりとり、やろやろ~」
と咲瑛さんが言った。

「春遠くんは、眠かったら眠ってていいよ」
と俺を気にかけている。

「じゃあ…お言葉に甘えて」 

「うん!おやすみ!」

「おやすみ」
と言って、俺は窓にもたれ眠った。

まおりちゃんは、優しい。いつもいっしょに寄り添ってくれる。気づいているのかは、分からない。

…けど、何か察して言ってくれ…

いや、ないだろ。たまたましりとりをしたいって言っただけだ。

…もう、眠ろう。

そして俺は水族館に着くまで深い眠りについた。
「お~い。生きてるか~」
と、声が聞こえた。まおりちゃんだ。

「まおり?一緒に行かないの?」

「そ~だよ~みんなで行こ~」

咲瑛さんに続き矢島がバスの前ら辺でまおりちゃんを呼ぶ。

「先に行っといて~」とまおりちゃんが言う。

「おっけ~先生に言っとくね~」

「ありがとう~」とみんなを先に行かせた。

「大丈夫?具合悪い?」と優しく言う。

「大丈夫…だよ。先行ってて。後でゆっくり行くから」とまおりちゃんに言ったが。

「いやいや、大丈夫そうに見えないんだけど?」
と言って、少し沈黙が続いた。

「…さっきのバス乗ってすぐの話のことなんだけど」まおりちゃんが心配した口調で言う。

「私と連に迷惑かけたくなかったから、矢島たちを別の所に連れて行ったんでしょ?」

「ご飯食べた後も気遣って出てくれたんでしょ?」とまおりちゃんは、優しくゆっくりそう言った。

「そう…矢島のやつ、まおりちゃんが付き合ってるの知らないから、強引にその場から逃げたんだ」

「やっぱりね…」とまおりちゃんが呟く。

「…そろそろ行こっか、迷惑かけるとあれだし」

そう言って、まおりちゃんは、俺の手を強く握り、俺を引っ張った。

「行こっ!」と元気な声でそう言った。

ほんとにまおりちゃんは…


いつもいっしょにいてくれる。
ついに着いた。

大きな川沿いに位置する、大きな水族館だ。

「あっ!きたきた。どうしたんですか?」
と静海先生が言ってきた。まおりちゃんは、すぐに

「春遠くんが全然起きなくて、遅れました!」
とはっきり言った。

まぁ事実だから仕方ないけど…

「もぅ~、メリハリをしっかりつけましょう!」
と怒られた。「はい…すいません」と俺は、謝った。

「さぁ!写真撮りますよ~」

みんなが一気に集まる。まおりちゃんとちょっとぶつかった。心臓の鼓動がうるさくなる。

「ご…ごめん」

「あ~いいよいいよ」
と答えてくれた。やっぱり彼氏持ちだとこのくらいだったら、何ともないのか。

「~っ」かすかに、何か聞こえた。

「大丈夫?」と声をかけると。

「わっ!」とまおりちゃんがびっくりした。

「え?大丈夫?」と聞くが。

「だ…大丈夫大丈夫。あははは…」
と言う。な~んだ大丈夫か。と一安心する。

「行きま~す。はいっ!チーズ!」
「それでは!皆さん行ってらっしゃ~い」
とカメラマンさんが言うと。みんなが走る。

まおりちゃんが誰か探している。連くんかな?

「まおり?誰探してるの?石鯛ならあっちだと思うよ?」とクラスメイトの女子が言うが。

「ううん!水族館は、優雅と咲瑛と一緒にまわるの!」と元気に言った。

「じゃ!そうゆうことで」とまおりちゃんが言うと。

「あ!いたいた。まおり~!こっち~!」
と叫びながら手を両手で振る、咲瑛さんがいた。

その瞬間まおりちゃんは、振り向き二人の方へ走りそのまま施設の中に入った。

「お~い、春遠~こっちこっち!」と俺を呼ぶ声もした。

「お前らそこにいたんだな」と矢島たちに向かってそう言う。

「早く行こうぜ~」と言って一番に走って行った。

「待てって~」と言いながら花都と一緒に走る。
本当に元気バカだ。
水族館に入館。

辺りには様々な魚や骨組み?とか色々あった。

「先にお土産見てみるか」
と行って、花都も誘った。

「おっ!」と声をあげた。

名前のアルファベット付きのキーホルダーだ。

「これ…俺のHとまおりちゃんのMと清花のSで完璧じゃん!」と口に出してしまった。

公共の場なのであまり声は出さないようにしよう。

そして俺はレジに行き、キーホルダーを三つ買った。そしたらそこに、

「えー!誰のアルファベット?もしかしてMってみずきのM?」

「お前のじゃね~よ」

こいつは、久野 瑞木(くの みずき)たまに話したりする奴。

「え~今買ったこのステッカーと交換しよ~や」

そう言いながら、ペンギンのステッカーを出してきた。

「しゃーねぇーな…もう一個買ってやるよ…」

「よっしゃ~!」

昔っから頼まれごとには、弱い俺だった。

もう一度レジに並び同じキーホルダーを買った。
「サンキュ~!」と喜んで立ち去った。

…だが瑞木の奴とまおりちゃんの奴は一緒のやつと言うことだ。

他に何か特別なものを…まぁ!今日含め、三日もあるんだしこれは部活用として…

個人的に送る物を探そう。

「さっ!行くかおまえ…ら?」

後ろを振り向く、あれ?誰もいない。

まさかあいつら…!

「俺を置いて行きやがったな…」

仕方ないとりあえず一人で回って、いたら合流しよう。そして俺は歩き出す。ぼっちで。

          ♢

水族館は、とても綺麗な所だった。

俺が今いるところはマップで言うと、真ん中ら辺で施設の中心辺りに作られた、大きな水槽の場所にいる。

魚たちは、自由自在に泳ぎ回り生き生きとしていた。俺は、ベンチに座ってじっくり眺めていた。

「そろそろ行くか」
とボソッと言って歩きだした。
通行していても水槽がたくさんあり、歩いているだけでも楽しかった。

するとそこによくわからない不思議な部屋があった。俺は、関係者の人に聞いてみた。

「ここの部屋は、なんですか?」

「ここは男女二人っきりだけで入るとても綺麗な所です。男女なら誰でもいいですよ」
と丁寧に教えて貰った。

すると突然…

「えー!ここ男女二人っきりでしか入れないの?」と声がした。その声の方を向く。

まおりちゃんたちだった。

「あれ?春遠じゃ~ん!やっほ~」と咲瑛さんが

こっちに気づいて、手を振ってくれた。

「何で、そんなにしょんぼりしてんの?」と聞くと

まおりちゃんが教えてくれた。

「咲瑛がここの水族館で一番楽しみにしてた所なんだけど…入れないみたいだね」

「そっか…それは残念だったね」
と話していたら、後ろから声がした。
「お前どこ行ってたんだよ~」と矢島が後ろ、から言ってきた。

花都もまっすぐ指を、指してきた。

「いやいやこっちのセリフ、お前らがどっか行ってたから一人で回ってたんだよ」

「え?マジ?それはごめんまじで」
と矢島が申し訳なさそうに謝った。

そしたら突然大声がした。

「あっ!いいこと思いついた!」と咲瑛さんが言うと。

「どうしたの?急に」と優雅さんが反応する。

「今まさに、男子三人、女子三人で全員いけんじゃん!」といいだした。

「たしかにそうだけど…俺はいいかな」と俺は遠慮するようにいうと「私も…いやでも…」とまおりちゃんが言う。

そうだよな、彼氏持ちだし、そんなこと出来ないよな。

そんなことを考えていたら咲瑛さんが…

「じゃあ春遠とまおりで組めば?」と言う。

…ん?え?

「いや無理無理、ダメでしょ!」「そ…そうだよ」

俺とまおりちゃんは、焦ったようにいう。

「でもまおりも見たいって言ってなかったっけ~?」と焦らすように咲瑛さんが言う。

「…じゃあ…行…く?」とまおりちゃんが言う。

「…いき…ます」とめっちゃかたことで言った。

僕より大きな物を背負っている君へ

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