修学旅行まであと、二週間。
二泊三日の修学旅行だ。
行くところは、長崎県。
一日目は、長崎で有名な、神社と水族館に行くらしい。
二日目が、平和を代表する公園?にて、千羽鶴を捧げる…まぁ、
千羽鶴を捧げて祈る式をするらしい。
そのあとは、原爆に詳しい資料館で、原爆についてたくさん見たり、学んだりする。
その後は、班別研修。
各クラス各班に、分かれて自分たちで決めたルートを通って、決まった時間に集合という。
まさに、修学旅行って感じだ。
最終日は、遊園地で遊ぶらしい。
名前なんだっけ?
まぁ無理に思い出さなくってもいっか。
そんな事を考えていたら、後ろから声がした。
「な~に、ボサッとしてんの?早く班別のルートの書類出しに行くよ~」と言いながら、書類の入った、ファイルで俺の後頭部を、コツンとした。
「あ~そっかごめんごめん」
そういえば、書類出しに行かないといけないんだった。
「もぅ~しっかりしろ~副班長」
と咲瑛さんが呆れた感じで言った。
「ふわ~あ……ねみー」あくびをして呟くと咲瑛
さんが…
「たしかに!今日春遠、みんなでルート決める時に、一人だけ眠そうにしてたよね!」とめっちゃ早口でそう言った。
「今日は本当に眠いんだよ…」
そう、昨日少し夜更かしをしてしまったのだ。
「昨日夜まで、ゲームやり込んでなんだよ…」
「なんのゲーム?」と知りたそうにこっちを向いてきた。
「え~と、パニットの森って言う。ほのぼのスローライフゲームだよ」
「えっ!春遠、パニ森してんの?!」と驚きを隠せない反応をしていた。
「面白いよね~パニ森。私とかまおりもやってるよ」
まおりちゃんもやってんのか。とふと思った。
「あのゲーム時間なくても、気軽にできるから、みんなやってるよ」
「へ~」と軽く返す。
「なんか反応薄くない?」と咲瑛さんが顔をしかめて言った。
「いやいや、そんな事をないよ?」と言うが。
「いやだって、’’へ~’’じゃん!もっとこう。
えっ!まおりちゃんやってんの?!とか、どんぐらい進めてんの?とか話広げたり、すんのが普通じゃあない?」
たしかにそっか、さすがにへ~’’はおかしかったか。
「話広げたりするの苦手だからさ。特に女子と一対一とかになったらなおさらだから」
「あ~、そうゆうことね。もっと頑張れよ~」
マジで話せるようにならないと、これからも将来困るよな~と俺は思った。
「あっ!ついたよ、職員室」
おっ、やっと着いたか。
「失礼しま~す」と咲瑛さんが言う。
「三年三組。宮野 咲瑛です。静海先生いますか?」
静海 茜(しずみ あかね)先生俺たち、三年三組の担任の先生だ。
「は~いどうかしましたか?」と静海先生が顔をひょこっと出した。
「班別研修のルートの書類を出しに来ました」
と神接客でこなしていく咲瑛さん。
「はい。貰いました。期限より前に出せて良い班ですね」と先生が褒めてくれた。まぁ俺に言われた訳では、ないけど。
「はいっ!ありがとうございます」と言って、頭をぺこっと下げた。
「失礼しました」と言って俺たちは職員室を、あとにした。
「すごいね咲瑛さん。神接客じゃん」
「えぇ~?そう?春遠が言うならそうなのかね~」とふざけた感じで言った。
やる時はやる、ふざける時はふざけるって感じの人だな。
「じゃあ、教室戻ろっか」と俺は言った。
「お前ら~帰ってきたぞ~」と俺は、矢島と花都に言った。
「お帰り~」と矢島が気づいてそう言った。
教室に戻ったとたん、咲瑛さんがダッシュで、まおりちゃんたちの方に走って行った。
「まおり~、優雅~、疲れたよ~」と言いながら座ってるまおりちゃんに抱きつく。
「もう~書類出しに行っただけでしょ?」
とまおりちゃんが言う。
「そ~だよ。書類出しに行くだけで’’疲れた~’’だなんて、修学旅行の時どうすんの?」
と優雅さんがド正論を言う。
「たしかに~」と咲瑛さんが言う。
「まぁ疲れた時は、春遠に抱っこか、おぶっても~らお~」沈黙が続く。
「え?な…なんで?!」と思わず、ツッコんでしまった。
「えー、だって春遠、この前工事のおじいさんが持ってた、めっちゃ大きくて重そうなパイプ軽々持ってたじゃん~」
あ~そういえばそんなこともあったな。
工事のおっちゃんが二人がかりで持ってて、重たそうだったから『手伝いますよ』って言って、手伝ったんけど、結構重かったな。
「ん~まぁたしかに、あのパイプすげ~重かったけど、さすがに女子は、その…」
「まぁ~そうだよね~、あっ!じゃあ怪我とかしたら、担いでね?」
一瞬迷ったが、怪我は仕方ないか。と思った。
「まぁ…歩けそうになかったら言って…」
「イェ~イ!私お姫様抱っこね?」
んん?
「私も…お姫様抱っこがいいな~まおりは?」
ま、まおりちゃん?
「私は…」俺は息をのむ。
「普通に杖になってほしいな!」
ツ…ツエ?
頭がパンクしそうだ。
「杖と言うよりかは、柱かな?体調崩したときの、もたれれる柱になって欲しいってこと」咲瑛さんがそう言う。
俺は誤魔化すように
「あーもうこんな時間だ。休み時間が終わって五時間目が始まってしまう~急がなきゃ~」と棒読みで言った。
「まてぃ!」と咲瑛さんが追いかけてきた。
「嫌だーマジ無理っすー!」と言って俺は教室を勢いよく出た。
♢
放課後、俺は部活に行った。
吹奏楽は、他の部活より三年の卒部が長い、十一月位まで吹奏はある。マジで大変だ。
「はぁ~疲れた」
「何が?」とクラパートの清花が話してきた。
「いや~なんか班別研修で、体調崩したら春遠私らの柱になって~とか、よくわかんないこと言い出すんだよ」
「ふ~ん、頼られてるって事じゃん、別に悪い事じゃなくない?」と清花が言った。
もう一人のクラパートの同級生の名前は、
田口 清花(たぐち さやか)だ。
小学校の頃からの知り合いだ。
「いや~まぁ、そうなんだけどさ、なんというか、彼氏持ちなのにぐいぐい来るからさ、どうすればいいか、わかんなくなるんだよな~」と返した。
清花は、女子の中で一番話しやすい。
だが、たまに喧嘩になったりすることがある。
「あ~、それちょっとわかる。やっぱ、異性の恋
人持ちとかだったら、ちょっと接しにくいよね」
「うんうん」
「ちなみに誰なの?」と聞いてきた。
「う~んと、最近で言うと、優雅さんと咲瑛さん、あと、まおりちゃん」
「えっ…」ときこえた。
「ん?どうかした?」
「春遠なの?最近まおりと仲良くしてる男子って?」
「何の話?見当がつかないんだけど…」
「いや…なんでもない…」
「そう?ならいいけど」
なんだろう、昔っから俺の言いたいこは、全部言う清花なのに、今日はちょっと変だ。
最近仲良くしてる男子?よく分かんないな…
「ん~…ま!いっか!クラリネット取ってこよ~」と言って俺は第一音楽室を出た。
楽器庫から自分の楽器を取り出し、第一音楽室に戻る。今日はいい天気だ。晴れてるし。
「ふぅ…さぁて楽器楽器」
鼻歌を歌いながら楽器のケースを開け、クラリネットを組み立てる。
「あっ!」楽器ケースを開けて思い出す。
「楽譜!教室に忘れちゃった」と言って、楽器ケースを閉め、第一音楽室を出て教室に向かった。
あ~まじでやらかした~とか思いながら教室に向かう。扉を開け、楽譜を取り出した。
「あったあった」
「…ん~…せっかくならどっかふらふらしていこっと」
この中学校は、近くでも有名で、色んな人が来る。
転校生とかも年に二、三人来たりする。
でもよくある、転校生がすげー可愛いとか、めっちゃかっこいいという、シチュエーションは全くない。
そんな事を考えていたら、ドタドタ走ってくる連中がいた。
野球部だ。
「おっ!青木くん、どうだ!前の話引き受けてくれるかい?」
「ごめんなんだけど、俺も三年だし…今更野球部に転部する予定はないよ」
こいつのなまえは野球部部長の大助 大輝(おうだ たいき)
肺活量もあるしバッティングセンスがすごくある!是非野球部に入ってくれ!と勧誘されて、断ったんだけど、しつこくて今ではもう大助くんの言うことは、全て流している。
「くそっ、今回もダメだったか。次こそ君を野球部に転部させてみせるっ!」
いや…だから、転部しないってと言おう思った時には、もういなかった。
はぁ~、本当に疲れるやつだ。
と思いながら、時計を見る。
やべっ…そろそろ時間だ。行かないと。
俺は、第一音楽室に走った。
♢
「ふぅ、ちょっと時間削っちまったな…」
第一音楽室に入ろうと、思ったら綺麗な音色が聞こえてきた。