僕より大きな物を背負っている君へ

「いつも、友達に助けて貰わないと、何にも出来ないの、でもそれを言う自信もなくて、この持病を知ってるのは、家族と優雅と咲瑛と春遠くんだけ」

俺は息をのんだ。

「ずっと辛い思いしてきたんだね。気づけなくてごめん」

「謝ることじゃないよ!」とまおりちゃんが首をぶるぶるしながら言った。たしかにそうだ。謝ることじゃない。

でも一つ疑問が浮かんだ。

「その持病って連くんは知らないの?」

「…うん、知らない」

「連に心配かけたくない」

「そっか」

「じゃあそろそろ、戻るよ。出来たらまた後で」

「うん。じゃあね」と手を振ってくれた。

そして俺は、保健室を出た。

「’’心配かけたくない’’か」

いつも自分と戦ってたんだね。

持病にいつも耐えて、ずっと一人で抱え込んでたんだね。

「言ってくれてありがとう」そう、小さく俺は言った。

「あれ?春遠じゃん!やっほー」
と、元気な声が聞こえた。

反射的に「まずい」と小さく呟いてしまった。
連くんだった。

「保健室ってたしかこっちだよな?」

「そ…そうだよ。どうかした?」
と、動揺を必死に隠しながら言った。

「まおりがたおれたって赤熊から聞いてさ。
いかなきゃっ!ってなってさ」

「あ~そうなんだね」必死に言葉を繋げて、連くんに返す。早く教室に行きたい。

「あれ?でも青木こっちなんかようあったの?」
と聞いてきた。一番言われたくないセリフだ。

「て…提出物出しに行ってたんだ。そんだけ」
と嘘を言った。

「ふ~ん。そうなんだ。じゃ!そろそろいくわ」

「うん。バイバイ」と言ったら、連くんはスキップしながら、保健室側に行った。

バレたかな?と思いながら、おそるおそる教室に向かった。

やっぱ、まおりちゃんへの愛が強いな~と俺は、改めてそう感じた。

「早く教室に帰ろっと」
そう呟いて、少し早走りで教室に帰った。
修学旅行まであと、二週間。

二泊三日の修学旅行だ。

行くところは、長崎県。

一日目は、長崎で有名な、神社と水族館に行くらしい。

二日目が、平和を代表する公園?にて、千羽鶴を捧げる…まぁ、

千羽鶴を捧げて祈る式をするらしい。

そのあとは、原爆に詳しい資料館で、原爆についてたくさん見たり、学んだりする。

その後は、班別研修。

各クラス各班に、分かれて自分たちで決めたルートを通って、決まった時間に集合という。

まさに、修学旅行って感じだ。

最終日は、遊園地で遊ぶらしい。

名前なんだっけ?

まぁ無理に思い出さなくってもいっか。

そんな事を考えていたら、後ろから声がした。

「な~に、ボサッとしてんの?早く班別のルートの書類出しに行くよ~」と言いながら、書類の入った、ファイルで俺の後頭部を、コツンとした。

「あ~そっかごめんごめん」

そういえば、書類出しに行かないといけないんだった。

「もぅ~しっかりしろ~副班長」
と咲瑛さんが呆れた感じで言った。
「ふわ~あ……ねみー」あくびをして呟くと咲瑛
さんが…

「たしかに!今日春遠、みんなでルート決める時に、一人だけ眠そうにしてたよね!」とめっちゃ早口でそう言った。

「今日は本当に眠いんだよ…」

そう、昨日少し夜更かしをしてしまったのだ。

「昨日夜まで、ゲームやり込んでなんだよ…」

「なんのゲーム?」と知りたそうにこっちを向いてきた。

「え~と、パニットの森って言う。ほのぼのスローライフゲームだよ」

「えっ!春遠、パニ森してんの?!」と驚きを隠せない反応をしていた。

「面白いよね~パニ森。私とかまおりもやってるよ」

まおりちゃんもやってんのか。とふと思った。

「あのゲーム時間なくても、気軽にできるから、みんなやってるよ」

「へ~」と軽く返す。
「なんか反応薄くない?」と咲瑛さんが顔をしかめて言った。

「いやいや、そんな事をないよ?」と言うが。

「いやだって、’’へ~’’じゃん!もっとこう。
えっ!まおりちゃんやってんの?!とか、どんぐらい進めてんの?とか話広げたり、すんのが普通じゃあない?」

たしかにそっか、さすがにへ~’’はおかしかったか。

「話広げたりするの苦手だからさ。特に女子と一対一とかになったらなおさらだから」

「あ~、そうゆうことね。もっと頑張れよ~」

マジで話せるようにならないと、これからも将来困るよな~と俺は思った。

「あっ!ついたよ、職員室」

おっ、やっと着いたか。

「失礼しま~す」と咲瑛さんが言う。

「三年三組。宮野 咲瑛です。静海先生いますか?」

静海 茜(しずみ あかね)先生俺たち、三年三組の担任の先生だ。

「は~いどうかしましたか?」と静海先生が顔をひょこっと出した。

「班別研修のルートの書類を出しに来ました」
と神接客でこなしていく咲瑛さん。

「はい。貰いました。期限より前に出せて良い班ですね」と先生が褒めてくれた。まぁ俺に言われた訳では、ないけど。
「はいっ!ありがとうございます」と言って、頭をぺこっと下げた。

「失礼しました」と言って俺たちは職員室を、あとにした。

「すごいね咲瑛さん。神接客じゃん」

「えぇ~?そう?春遠が言うならそうなのかね~」とふざけた感じで言った。

やる時はやる、ふざける時はふざけるって感じの人だな。

「じゃあ、教室戻ろっか」と俺は言った。

「お前ら~帰ってきたぞ~」と俺は、矢島と花都に言った。

「お帰り~」と矢島が気づいてそう言った。

教室に戻ったとたん、咲瑛さんがダッシュで、まおりちゃんたちの方に走って行った。

「まおり~、優雅~、疲れたよ~」と言いながら座ってるまおりちゃんに抱きつく。

「もう~書類出しに行っただけでしょ?」
とまおりちゃんが言う。

「そ~だよ。書類出しに行くだけで’’疲れた~’’だなんて、修学旅行の時どうすんの?」
と優雅さんがド正論を言う。

「たしかに~」と咲瑛さんが言う。

「まぁ疲れた時は、春遠に抱っこか、おぶっても~らお~」沈黙が続く。
「え?な…なんで?!」と思わず、ツッコんでしまった。

「えー、だって春遠、この前工事のおじいさんが持ってた、めっちゃ大きくて重そうなパイプ軽々持ってたじゃん~」

あ~そういえばそんなこともあったな。

工事のおっちゃんが二人がかりで持ってて、重たそうだったから『手伝いますよ』って言って、手伝ったんけど、結構重かったな。

「ん~まぁたしかに、あのパイプすげ~重かったけど、さすがに女子は、その…」

「まぁ~そうだよね~、あっ!じゃあ怪我とかしたら、担いでね?」

一瞬迷ったが、怪我は仕方ないか。と思った。

「まぁ…歩けそうになかったら言って…」

「イェ~イ!私お姫様抱っこね?」

んん?

「私も…お姫様抱っこがいいな~まおりは?」

ま、まおりちゃん?

「私は…」俺は息をのむ。


「普通に杖になってほしいな!」
ツ…ツエ?

頭がパンクしそうだ。

「杖と言うよりかは、柱かな?体調崩したときの、もたれれる柱になって欲しいってこと」咲瑛さんがそう言う。

俺は誤魔化すように

「あーもうこんな時間だ。休み時間が終わって五時間目が始まってしまう~急がなきゃ~」と棒読みで言った。

「まてぃ!」と咲瑛さんが追いかけてきた。

「嫌だーマジ無理っすー!」と言って俺は教室を勢いよく出た。

          ♢

放課後、俺は部活に行った。

吹奏楽は、他の部活より三年の卒部が長い、十一月位まで吹奏はある。マジで大変だ。

「はぁ~疲れた」

「何が?」とクラパートの清花が話してきた。

「いや~なんか班別研修で、体調崩したら春遠私らの柱になって~とか、よくわかんないこと言い出すんだよ」

「ふ~ん、頼られてるって事じゃん、別に悪い事じゃなくない?」と清花が言った。
もう一人のクラパートの同級生の名前は、

田口 清花(たぐち さやか)だ。

小学校の頃からの知り合いだ。

「いや~まぁ、そうなんだけどさ、なんというか、彼氏持ちなのにぐいぐい来るからさ、どうすればいいか、わかんなくなるんだよな~」と返した。

清花は、女子の中で一番話しやすい。

だが、たまに喧嘩になったりすることがある。

「あ~、それちょっとわかる。やっぱ、異性の恋
人持ちとかだったら、ちょっと接しにくいよね」

「うんうん」

「ちなみに誰なの?」と聞いてきた。

「う~んと、最近で言うと、優雅さんと咲瑛さん、あと、まおりちゃん」

「えっ…」ときこえた。

「ん?どうかした?」

「春遠なの?最近まおりと仲良くしてる男子って?」

「何の話?見当がつかないんだけど…」

「いや…なんでもない…」

「そう?ならいいけど」

なんだろう、昔っから俺の言いたいこは、全部言う清花なのに、今日はちょっと変だ。

最近仲良くしてる男子?よく分かんないな…

「ん~…ま!いっか!クラリネット取ってこよ~」と言って俺は第一音楽室を出た。