僕より大きな物を背負っている君へ

「お前さ。一回当てただけで調子乗んなよ」

無慈悲な言葉が飛んでくる。

「別に…調子になんて乗ってないよ。それとも負け惜しみ?」

両手を後頭部に当て、少し笑って言う。

「それが調子乗ってるって言ってんだろ!」

無駄にでかい声が降りかかってくる。

「たかが遊びで本気になんなよ」

「はぁ?」そう言って俺の胸ぐらをつかみ、醜い顔を近づけてくる。

「ふざけんなよ?俺がお前ごときにやられるわけねぇだろ!」

「はいはい。負け惜しみ~」

「死ね!!」と言って手を上げる。

俺はとっさに両手を上げる。

だがこいつは止まらない。

本当に勝負ごとにうるさい奴らはわがまま赤ちゃんばっかりなんだな。

これだから本当の’’バカ’’は嫌いなんだ。

殴られると思ったその時だった。

「何してんの!」
先生…だと思ったが違った。

まおりちゃんだった。

「げっ…生徒会長じゃん…」と呟いて尻尾まいて逃げて行った。

まおりちゃんはこの学校の生徒会長だ。

みんなに尊敬されていて生徒会長にふさわしい人だ。

「大丈夫?」顔を少しゆがめてまおりちゃんは、言った。

「大丈夫だよ。まおりちゃんが来てくれなかったら大変だったよ。ありがとう」
と笑みを浮かべる。

「よかった~」表情が軽くなり手を胸に当てながら言う。

「ちょっと騒がしかったから心配でね…」

まおりちゃん、心配で助けに来てくれたのか…

「…あいつ…たかが遊びなのに本気になっててさ。…まぁ…俺も初戦の時はちょっと本気になっててたけどね」

あいつの走り去った廊下を眺めながらいう。
「まおりちゃんっていつも’’見てるよね’’」

まおりちゃんにそう言うと首を傾げた。

「どうゆうこと?」とまおりちゃんが質問する。

「いや…こう…なんかさ…」

「何もかも見透かしているというかなんと言うか。心の中まで丸見えって感じがして、すごいなって思って」

「なにそれ」ふふっとまおりちゃんは笑った。

「でも…まぁ…そうかもね」満面の笑みを見せて言った。

「絶対そうだよ」と呟いた。

「青木くん?もう入れるよ」と三組の教室から優雅さんが俺に言った。

「わかった。男子たち呼んでくるわ。じゃあまた後で」と言ってまおりちゃんに手を振る。

「うん!また後でね!」と満面の笑みを見せて手を振り返してくれた。

またまおりちゃんとたくさん喋っちゃった…

まぁ…悪いことではないと思うけどさぁ…

そんなことを考えながら四組の教室に行き、皆に

「入って良いらしいよ」と言って。

三組に入り、帰りの会を終わらせ。

自分の家帰るのであった。
五月になった。

朝のホームルームが始まった。

「えー明日から修学旅行について色々話して行くのでそのつもりでいてください。」

クラスが五秒フリーズした。

「ええええええーーーーーー!!!」

生徒全員が言う。

「修学旅行とかってもっと二学期とかからじゃないの?!」

「何で五月?!せめて十一月とかだろ!?」

みんな困惑している所に先生が手を鳴らす。

「はい、静かに、冷静に考えて下さい。貴方たちは受験生ですよ?十一月なんかに修学旅行を入れたらどうなりますか?受験に支障が出たらどうするんですか?」という。

そう、俺たちは、受験生。十一月になんてもってのほかだろう。

みんなも納得したようだ。

「たしかに~それもそうか」

「盲点!」

とちらほら言っていた。

朝のホームルームが終わった。
「修学旅行か~春遠、誰と組む?」

「ん~そうだなぁ、話のわかる奴がいいなぁ~」

「なにそれっ!俺が話のわからない奴、呼ばわりするなよ~」と言いながらを俺の肩を両手でつかみぐわんぐわん揺らす。

だが真面目にどうしよう。班のメンバーは男女

別々で三~四人グループを作れと先生に言われている。

どうしようと頭を抱えていたら、矢島が呼んだ。

「なぁ!後ろにいるマスク付けたやつは?」

と言われ、後ろを振り向く。

いた。あいつの名前が出てこない。たしか…

「花都 幸太郎(はなみや こうたろう)だっけ?」

俺がそう言った瞬間矢島が走った。

「なぁ!花都くん、俺らと班組も!」

はぁ…とため息をつく。本当にバカだ。

後ろから矢島の後頭部をチョップした。「いてっ」と矢島が言う。

「あほかお前は、ぐいぐい行き過ぎなんだよ。ごめんね?うちの矢島が」

だが反応が帰って来なかった。
あれっ?と心の中で呟く。いつものように、おどおどした感じを出さず普通に話しかけたはずなのに、反応が帰ってこないだと?も…もしかして…

「花都って無口?」

そう言うと、頭を縦に頷いた。

やっぱりそうだ。こいつは根っからの無口だ。

「でさ、話戻すけど一緒に修学旅行の班組まない?」と矢島が言う。

首を元気よく縦に頷いた。いいってことか

「じゃあ俺たち三人友達だな!あははは」

話の通じない奴に、無口男子、俺の友達変な奴ばっかだな。

          ♢

次の日

「はい、予定どうり男子の班と女子の班くっつけて行くよ~」と先生が言う。

俺のクラスは男子…十八人、女子…十七人の三十

五名のクラスメイトで構成されている。

だが男子には一人不登校?分からないが、一人いつもいないから実質男子…十七人と、女子…十七人になっている。

別れた班は男子が四,四,三,三,三,計五班、女子が四,四,三,三,三,計五班となった。

女子は男子の班を決めるのが嫌らしいので男子からの、指名制がいいと先生に行った。

先生は、軽く許可を出した。
俺らの班は三人、俺と矢島と花都の三人だ。

俺らが取るべき手段はただ一つ、同じ人数で大人しい女子の班と組むことだ!

「お前らマジでそれしかないぞ」

「えっ?なんで?」

「ギャル見たい女子と組んだら俺ら精神的に死ぬぞ」

と言うと、「た…たしかに」と矢島が言う。

花宮も恐ろしそうな顔で頷いた。

「よし、いくぞ」

三人の所はたったの三班だけ、一班目を見る。

あ~ダメだ。飯にこだわりの強い班だ。

二班目はどうだ!…とにかくうるさいとこだ。

終わった。俺たちの修学旅行死んだと思いながら
三班目を見る。

奇跡が舞い降りた。

竹野、宮野そして凍宮と書いてあった。

俺たちは喜んだ。まともな班があって。

そんな中話かけてきた奴がいた。

「もしかしてここの班狙ってる?」

と聞こえた。嫌な予感。

後ろを、ゆっくり振り返る。

よりによってこいつかと心の中で呟く。
赤熊 千(あかぐま せん)だった。

「俺らもここの班狙っててさ」

まじかと、絶望する。

「まぁここは正々堂々とジャンケンで勝負やな。そっちは、誰が出す?」と聞いてきた。

後ろを振り返ると、「お…俺はいいや」と自信無さそうに矢島が言った。花都も首を横にぶんぶんふる。

こいつら…責任をおいたくないんだなと悟った。

「じゃあ俺が出るよ…」と渋々言った。

勝たないと。俺たちの修学旅行ライフが壊滅してしまう!と心の中で叫んだ。

「行くぞ…」

と合図が来る。

「ジャンケン、ポン!」と声を合わせて言った。

結果は…

「くそっ!負けたー!」という声が聞こえた。

「やったー!勝った~」何とか勝てた。

「春遠ナイス~」

「このジャンケン負けたらマジでオワタ」

花都も親指を立てて、こっちに向けておきた。
「先生~一班決まった~」と矢島が報告しに言った。

ほんとに疲れた。なんでこんなに疲れないといけないんだよ~と心の中で呟く。

「えぇ~とじゃあ、青木の班と凍宮の班な」
先生が言った。

これは不可抗力だ、この班以外にしてしまったら、こき使われるだけだ。

と思っていたら。

「よろしく~」咲瑛?さんの声が聞こえた。

「おっ、優雅さんじゃ~ん。よろしくね!」と元気よく矢島が言った。

優雅さんはちょっと困った顔をしていた。

この班は、男子は俺、矢島、花都。女子はまおりちゃん、優雅さん、咲瑛さんの六人班となった。

マジで良かったーっと改めて思うった。そこに先生の声が聞こえた。

「じゃあ、ちょっと早いけどそこの班は、集まって座ってメンバーシート書いといて」と先生が言いながら、紙を渡された。

「じゃあどっか座ろうか」と咲瑛さんが言った。

「後ろの席とかどう?」と矢島が言う。

「いいじゃん後ろの席」まおりちゃんと優雅さんが言って、後ろの方にみんな移動していた。

「じゃあ後ろ行くか。行こ花都」

そう言って花都と一緒に後ろの席に向かった。

僕より大きな物を背負っている君へ

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