犬丸先輩がスチールラックに置かれた物の裏に、葛谷さんのスマホを隠したのを見ながら混乱していると、未來先輩が近づいてきた。
「さ、ちょっとこっちに来てちょうだい。望羽ちゃんには少しだけ隠れていてもらうわ」
うしろから背中を押されて、「え、え?」と歩くと、葛谷さんのとなりにある、かなり大きめの段ボール箱の前に立たされる。
葛谷さんが座ったままその段ボール箱のふたを開けてわたしを見るものだから、まさか、“隠れる”って…!と目を丸くした。
「あ、あの、わたしお兄ちゃんになにも連絡してなくて、もし時間がかかるなら…」
「大丈夫、連絡なんてする必要はないわ。ほら、きゅうくつかもしれないけど、ここに入ってじっとしててね」
「で、でも、どうして段ボール箱なんかに…!」
「早くしないと客が来る」



