シスコン兄の溺愛彼女

平日の昼下がり。職場のデスクでパソコンに向かい合い、ひたすら数字を入力している俺。

昼休憩を過ぎたばかりなので、眠そうにしている人、機械のように無表情な人、こっそりチョコを口に含んでいる人、様々な人間がひたすら数字とパソコンを凝視している。

この静かな空間の中、俺の心境は全く静かでも穏やかでもなかった。
身体中の血液は沸騰しそうだし、本当は目の前のパソコンをひっくり返してやりたいくらいだ。

もちろん、大人な俺はそんな事はしないけれど。

何故、大人な俺が、こんなにも荒れているのか。

それは、先日の亜優ちゃんの家での出来事のせいだ。
まさか亜優ちゃんがファンだと力説していたのが、
モデルの玲音だったとは思いもしなかった。

玲音というのは、俺の実の兄だ。
昔から俺とは性格も趣味も何もかも合わない、俺様男。奴がモデルの仕事をしているのは知っていたが、あまり気にしていなかった。と、言うより奴が何をしていようとも興味がない。

それなのに!!奴は、女神を誘惑したのだ!!
許せるはずがない!あんな俺様男、女神には相応しくないし、視界にさえ入れてはいけない。

それなのに!!
亜優ちゃんはご機嫌で見せてくれたのだ。
玲音の推し活グッズとやらを。

亜優ちゃんには悪いが、全てお焚き上げして燃やしてしまいたい。あんな物を神聖な女神の部屋に置いてはいけない。あいつのせいで女神が汚されてしまう。