次の日がちょうどお休みだったことと、リファルド様の都合もついたため、一緒に警察署に向かうことになった。
警察署の奥にある留置所にお母様は入れられていて、鉄柵の向こう側に私が立つと笑顔を見せた。
「サブリナちゃん、やっと顔を見せてくれたのね!」
「……お母様、どうして嫌がらせをするんですか」
「嫌がらせをしているのはあなたじゃないの! わたしはただ、幸せに暮らしたいだけなの。どうして協力してくれないの?」
「私がいなくても幸せに暮らせますよ。ですからもう、私のことはもう捜さないでください。アキーム様と再婚なんて絶対にしませんから!」
強い口調で言うと、お母様はショックを受けたような顔をした。
「一体、どうしちゃったの。あなたは言い返すような子じゃなかったじゃないの」
「言うことを聞いていれば、嫌われないと思っていたからです」
「なら、わたしのお願いを聞いてちょうだい!」
お母様は震えながら訴えてきた。
実の娘に言い返されることも怖いらしい。
それなのに、よく、お父様を追いかけていけたものだわ。
世間なんて、私よりももっと冷たい人が多いのに。
「お母様、聞いてください。私はアキーム様のことはもう好きではありません」
「……どうして? 彼が浮気をしたから? バンディが言っていたけど、貴族の男性は愛人を持つことは当たり前のことだそうよ。妻は一人だけだから良いじゃないかと言っていたわ」
「お母様は、その話を聞いて納得できたんですか?」
「……どういうこと?」
「自分を放って、お父様が他の女性に会いに行くことは許せることなんですか」
「……それは嫌だけど、一緒にいられなくなるくらいなら我慢するわ!」
お母様は顔を手で覆って叫んだ。
依存してしまうと恐ろしいことになるのね。
そして、自分がそうなっているとはわからないから困ったものだ。
「お母様、私は私の人生を歩みます。お父様にも邪魔はさせません。お母様が私を諦めてくれないのであれば、会えないようにするしかありません」
「そ、そんな。サブリナちゃん、あなた、本当にどうしちゃったの」
久しぶりに会うお母様は服や肌は薄汚れているし、十歳以上老けているように見える。
苦労したのでしょうけど、どうして、お母様は私よりもお父様を選ぶのかしら。
私では頼りにならないから?
同族嫌悪だから?
……もう、どうでもいいわね。
「私はもう、お母様達の前には現れません。今回の件で、お母様達は強制送還になり、二度と入国出来なくなるでしょう」
「……サブリナちゃん。どうして、そんな酷いことを言う子になっちゃったの」
「私はきっと、最初から冷たい人間なんです。では、さようなら、お母様。今までありがとうございました」
深々とお辞儀をすると、お母様が叫ぶ。
「サブリナちゃん! 待って! あなたがアキーム様と再婚してくれないと駄目なのよ! バンディに捨てられたら、わたしはどうやって生きていったらいいの!?」
「お父様のために全てを投げ捨てる強さがあるなら、他に素敵な何かを見つけて生きていけるはずだと私は思います。自分の人生です。他人に何を言われようと、迷惑をかけずに自分が楽しく生きていけるなら、それが一番ですから」
「バンディと一緒にいることがわたしの幸せなの!」
お母様は必死に訴えてくる。
親というものは、子供を第一に考えるものだと思っていた。
でも、実際は全ての人がそうというわけではないのね。
そして、これがお母様の生き方なんだわ。
「ごめんなさい、お母様。私はあなたのために自分を犠牲にすることはできません」
親不孝者だと言われても、絶対にアキーム様と再婚なんてしない。
はっきりと告げてから、私はその場をあとにした。
お母様が泣きわめいていたけど気にしない。
このあとが本番だからだ。
待っていてくれたリファルド様と合流したところで、警察の担当者がやって来たので、お母様についての話をした。
そして、必要なことを話し終え、警察署を出ると、案の定、お父様が待っていたのだった。
今度こそ、お父様と決着をつけるわ。
警察署の奥にある留置所にお母様は入れられていて、鉄柵の向こう側に私が立つと笑顔を見せた。
「サブリナちゃん、やっと顔を見せてくれたのね!」
「……お母様、どうして嫌がらせをするんですか」
「嫌がらせをしているのはあなたじゃないの! わたしはただ、幸せに暮らしたいだけなの。どうして協力してくれないの?」
「私がいなくても幸せに暮らせますよ。ですからもう、私のことはもう捜さないでください。アキーム様と再婚なんて絶対にしませんから!」
強い口調で言うと、お母様はショックを受けたような顔をした。
「一体、どうしちゃったの。あなたは言い返すような子じゃなかったじゃないの」
「言うことを聞いていれば、嫌われないと思っていたからです」
「なら、わたしのお願いを聞いてちょうだい!」
お母様は震えながら訴えてきた。
実の娘に言い返されることも怖いらしい。
それなのに、よく、お父様を追いかけていけたものだわ。
世間なんて、私よりももっと冷たい人が多いのに。
「お母様、聞いてください。私はアキーム様のことはもう好きではありません」
「……どうして? 彼が浮気をしたから? バンディが言っていたけど、貴族の男性は愛人を持つことは当たり前のことだそうよ。妻は一人だけだから良いじゃないかと言っていたわ」
「お母様は、その話を聞いて納得できたんですか?」
「……どういうこと?」
「自分を放って、お父様が他の女性に会いに行くことは許せることなんですか」
「……それは嫌だけど、一緒にいられなくなるくらいなら我慢するわ!」
お母様は顔を手で覆って叫んだ。
依存してしまうと恐ろしいことになるのね。
そして、自分がそうなっているとはわからないから困ったものだ。
「お母様、私は私の人生を歩みます。お父様にも邪魔はさせません。お母様が私を諦めてくれないのであれば、会えないようにするしかありません」
「そ、そんな。サブリナちゃん、あなた、本当にどうしちゃったの」
久しぶりに会うお母様は服や肌は薄汚れているし、十歳以上老けているように見える。
苦労したのでしょうけど、どうして、お母様は私よりもお父様を選ぶのかしら。
私では頼りにならないから?
同族嫌悪だから?
……もう、どうでもいいわね。
「私はもう、お母様達の前には現れません。今回の件で、お母様達は強制送還になり、二度と入国出来なくなるでしょう」
「……サブリナちゃん。どうして、そんな酷いことを言う子になっちゃったの」
「私はきっと、最初から冷たい人間なんです。では、さようなら、お母様。今までありがとうございました」
深々とお辞儀をすると、お母様が叫ぶ。
「サブリナちゃん! 待って! あなたがアキーム様と再婚してくれないと駄目なのよ! バンディに捨てられたら、わたしはどうやって生きていったらいいの!?」
「お父様のために全てを投げ捨てる強さがあるなら、他に素敵な何かを見つけて生きていけるはずだと私は思います。自分の人生です。他人に何を言われようと、迷惑をかけずに自分が楽しく生きていけるなら、それが一番ですから」
「バンディと一緒にいることがわたしの幸せなの!」
お母様は必死に訴えてくる。
親というものは、子供を第一に考えるものだと思っていた。
でも、実際は全ての人がそうというわけではないのね。
そして、これがお母様の生き方なんだわ。
「ごめんなさい、お母様。私はあなたのために自分を犠牲にすることはできません」
親不孝者だと言われても、絶対にアキーム様と再婚なんてしない。
はっきりと告げてから、私はその場をあとにした。
お母様が泣きわめいていたけど気にしない。
このあとが本番だからだ。
待っていてくれたリファルド様と合流したところで、警察の担当者がやって来たので、お母様についての話をした。
そして、必要なことを話し終え、警察署を出ると、案の定、お父様が待っていたのだった。
今度こそ、お父様と決着をつけるわ。

