やってしまった、と思った。


気持ちを伝えるつもりなんて全くなかった。だけど星谷くんを見ていたら、考える余裕もなく口からこぼれ落ちていて、気がつけば後戻りができなくなっていた。


結果はわかりきっていたから特別傷つくことはなかったけれど、本当に何をやっているんだろう、私。


告白をするにしたって、せめてもっとちゃんと星谷くんのこころが穏やかな時に言いたかった。だって先生とあんなことがあって、恋が終わったばかりのひとに〝好き〟なんて。

絶対に困らせただろうし、びっくりさせた。もっともっと、こころの中をぐちゃぐちゃにさせてしまった。


だから、後悔しかない。


まだ何もできていないし、これから頑張りたかったのに。頑張ったところで結果が変わるかなんてわからないけれど。


だけど振られてしまえば、もうおしまいだ。こころにぽっかり穴が空くとは、まさにこういうことなのだろう。

一応今後も友達としていてくれるらしく、昨日もいつも通り普通に接してくれたけれど。

そこに星谷くんはいるのに、失ってしまったみたいな感覚になる。もちろん決して最初から自分のものだったわけではないのだけれど、もうきっとその背中には届かないのだろうなって。


ただただかなしくて、苦しかった。でもきっとそれは、星谷くんも同じだ。







「ひお、チョコ食べる?」

「、あ、食べます……!」

「はい、どーぞ。あまーいやつ」

「甘いやつ……」

「ひお、今日元気なさそうだから」



そして現在バイトの休憩中。こちらから言う前に、どうやら由真先輩にはお見通しらしい。



「ありがとう……先輩」

「ん、なんかあった?」



やさしい声。私は先輩のこの声に弱い。

一瞬で目に涙が溜まっていき、こぼれそうになるのを上を向いて堪えた。



「……っ、うう〜……っ」

「なに、どうしたの」



先輩はもう慣れっこだ。私がこうやって泣くのも、落ち込むのも。


だけど1度も呆れることなく、今だって私の隣の椅子に座って、やさしく声をかけてくれる。


私はきっと先輩がいなければ、どうしようもなく泣けてしまう夜を何度も過ごしていたと思う。