昼休み。自分の席でひとりでお昼ご飯。あーちゃんは仁先輩と食べるようで、授業が終わるとダッシュで先輩の教室に向かっていった。

そう、ふたりは見事付き合い始めたのだ。


4人で遊んだ日、予想通りふたりはくっついた。帰り道に仁先輩の方から告白したらしい。もちろん即OK。美男美女カップルの誕生である。

その夜電話であーちゃんから報告を受けた時はとても嬉しかったし、学校でニコニコしながら仁先輩の話をするあーちゃんは本当にかわいい。きっと今頃楽しい時間を過ごしていることだろう。



なんてことを考えながらなんとなく教室を見渡せば、星谷くんの姿が目に入った。本を読むわけでもなく、ぼーっとしている。


……あ、もしかしたら今がチャンスかも。



机の上を片付けて、席を立つ。星谷くんの席に近づくにつれて、ドキドキと心臓が音を立て始めた。



「星谷くん」

「ん、なに?」



瞳の中に、私が映る。

ドキドキが心地いい。目と目が合うこの瞬間に、いちいち幸せを感じる。



「これ、あげる」

「え……なに?」

「お土産……!」



紙袋を手渡せば、「お土産?」と受け取ってくれた。実はあの日、星谷くんにお土産を買っていて。朝からずっと渡したくて勝手にソワソワしていたのだけれど、渡すタイミングを今まで掴めずにいたのだ。


買ってきたのはバタークッキー。1枚ずつ動物の絵がプリントされているやつ。形に残らない物の方が重くないし渡しやすいんじゃない? と、由真先輩にアドバイスをもらってこれにした。



「なんのお土産……?」

「あ……それは、えーっと……」

「あー、デートの?」

「! もう、デートじゃないよ〜」



その場で中身を確認してくれて。「動物園行ったんだ」と首を傾げられたので、「うん」と小さく答える。

だって、急に恥ずかしくなってきた。

あの時は、お土産コーナーを見て星谷くんの顔が浮かんで。その場のノリ的なものでつい買ってしまったのだけれど。


なんで俺にお土産? と、思っているに違いない。出会った時よりは仲良くなれたとはいえ、こんなこと初めてしたから。


……聞かれたら、なんて答えよう。