「メロンパンなかったね」

「うん……残念」

「たまには違うのもいいじゃん」

「そうだけどさ〜」



昼休み、あーちゃんと購買でパンを買った。この学校のメロンパンがすごく美味しくて、購買でお昼を買う時はいつもそれを選ぶのだけれど、今日は残念ながら売り切れていた。

代わりに初めて買ったジャムパンを抱えて、「お腹空いた〜」とあーちゃんと話しながら階段をのぼろうとしていれば、後ろから「ひお」と、柔らかい声に呼び止められる。


そんなふうに私を呼ぶひとは、ひとりしかいない。



「あ、由真先輩」

「あーちゃんもこんにちは」

「こんにちは〜っ」



こんなところで会うなんて。どうやら先輩も購買で何か買ったらしい。その証拠に先輩の手にはパンが握られている。しかも、私の大好きなメロンパンが。欲しかったものだったが故、思わずそのメロンパンを見つめてしまった。



「なーに、ひお」

「あ、いや……」



だけどその熱視線は、さすがに先輩にバレてしまうわけで。慌ててメロンパンから目を逸らす。これは先輩のメロンパンだ。そんなに見ちゃいけない。



「あーこの子、購買のメロンパン好きなんですけど、今日売り切れちゃってて〜」



だから本当はそれが欲しかったなんてことは言わないでおこうと思っていたのに、あーちゃんが全部答えてしまって。


あーあ、だめだよあーちゃん。そんなこと言ったら、先輩はきっと──



「え、好きなの? これ」

「……」

「ひーお。好きなの?」

「好き……ですけど」

「じゃあ交換しよ」



……ほら、やっぱり。


こんなことで嘘をつくわけにもいかないので、結果白状することになる。そうすれば先輩が私の持つジャムパンを摘もうとしたから、すかさず半歩下がった。