「……ん? 今なんて?」

「だーかーらー! 勉強会しよっ?」



期末テストも終わって、あとは夏休みを待つだけのある日。流れであーちゃんと仁先輩カップルと一緒に帰っていたら、あーちゃんがニコニコ笑顔でそう言ってきた。



「勉強会……? 誰と?」

「私と仁くんと、由真先輩と!」

「えーっと……?」

「でね、夜は花火大会あるんだけど、4人で行こうよ!」

「花火大会……」



勉強会に花火大会。いきなりの提案に状況が把握できずにいる私に、あーちゃんは〝お願い〟のポーズを向ける。



「私たちは夏休みの宿題も進むし、先輩たちは受験勉強の息抜きにもなるし、どう?」

「えっと……ふたりきりじゃなくていいの?」

「うん! ね、仁くん」

「うん。高校最後の夏休みだからさ、勉強も大事だけど思い出残したいなって。でも陽織ちゃんがちょっとでも嫌なら、全然断って」



仁先輩にまでそんなことを言われてしまったら、もう答えはひとつだ。私も先輩たちと思い出を作りたいし。


だけど、すんなりと頷けないのは──



「嫌じゃないです……でも……」

「もしかして、由真のこと?」

「……はい」



私が変な空気にしてしまうのではないかと、ちょっと心配だ。由真先輩とふたりきりならまだしも、あーちゃんたちを巻き込んでしまっては、せっかくの楽しい雰囲気を壊してしまうことになる。



「大丈夫大丈夫。そこはちゃーんとフォローするよ」



だけどそんな私の不安を、仁先輩はすぐに見抜いてくれた。当たり前だけれど、仁先輩も由真先輩と私のことは知っている。私が答えを出すのを見守ってくれているひとのひとりだ。



「そうだよっ! 私たちに任せてさっ」



「ねっ?」と、あーちゃんに見つめられて、仁先輩にも「うんうん」と頷かれて。

それだけで簡単にこころが安心に傾くから。



「……じゃあ、行こうかな」



それに、もうひとつ。

先輩と同じ時間をもっと過ごして、自分の気持ちと向き合いたいなって思っていたから。


これはきっと、そういうチャンスだ。