「由真、お疲れさまでしたありがとう! あーんど、受験頑張ってね! はい、かんぱーい!」



今日は定休日なのを利用して、バイト先にて由真先輩の送別会だ。店長と美里さん、あとは大学生の先輩たちと、スタッフは全員揃っている。みんなで顔を合わせるのはものすごく久しぶりだ。

テーブルには店長と美里さんが作った料理が並ぶ。どれも由真先輩が好きなメニューなんだとか。



先輩から辞める話を聞いたのは、体育祭が終わってすぐのバイトの時。そろそろ辞めるんだろうなぁとは思っていたけれど、いざ聞くと想像していたよりも寂しい気持ちになった。


そして、もうひとつ。



『えっ、あ……そ、そ、そうですよねっ、先輩、受験……』

『うん、そうなの』

『頑張って、くだはい……っ』

『ふ、〝はい〟?』

『さ、さいっ!』



話したのは体育祭の日ぶりで。会わない数日の間で先輩のことばかり考えていたら、次に会った時には体育祭の時よりずっと緊張してしまって。

先輩は普通にしてくれていたのに、私が意識しまくっちゃって上手く喋れなくて。結局先輩との最後のバイトも、いつも通りにできなかった。

なんなら今だって、同じ空間にいるだけでくすぐったいような気持ちだ。


今日はせっかくの送別会、変な空気にならないようにしなければとは思うけれど、やっぱり先輩の顔が上手く見られない。


……今まで私、どうやって先輩と話していたっけ。



「陽織どうした〜? なんか今日変じゃない?」

「っえ、全然、そんなこと、」

「寂しいんだよな? 由真にいちばん懐いてたから」



あまり会話に参加せずに黙々と食べていれば、先輩たちに指摘されてしまった。きっと前までの私なら、〝そうなんですよ〜〟って、言えていたと思う。


だけど由真先輩にも聞こえているであろうこの距離で、その返事は正解なのかと考えてしまったりして。


それになんだか由真先輩がこっちを見ている気がするし。


……だめだ、キャパオーバーである。