星谷くんと水族館に行ってから1週間。あれから特別なことは何もなかったけれど、確実に前よりも距離が縮まったように思う。
それにこの1週間は、いつもよりも胸が騒がしくて、ふわふわもして、なんだか楽しかった。好きなひとにそういう対象として見てもらえるって、思っていたよりも嬉しいものらしい。
「テストどうだった?」
「うーん……誇れる点数ではなかったけど、赤点は免れたよ……!」
「よかったじゃん」
「星谷くんは?」
「まぁまぁかな」
「それ、絶対よかったやつだ」
放課後の帰り道。何回も歩いているこの道だって、キラキラして見えるような気がする。もちろん、隣に星谷くんがいるっていうのもそうだけれど。
『うん、入ってるよ』
まるであの日の星谷くんの言葉たちが、魔法をかけてくれたみたいだ。
「もう冬休みだね〜」
「ね」
「そしたらクリスマスだ」
「1年はや」
クリスマス。
さらりと言ってみせたけれど、内心とてもドキドキしている。だって、誰もがちょっとは意識をしてしまう日でしょ?
いちばんに思うのは、好きなひとと過ごせたらいいなぁ、ってことで。
一緒に帰ることになった時から、駅に着くまでに絶対言おうと思っていたことがある。こういうのはたぶん、行動した者勝ちだと思うから。
「あの……」
「うん?」
立ち止まれば、星谷くんも同じように歩みを止めてくれた。ゆっくり小さく深呼吸をして、覚悟を決める。
「……クリスマス、なんだけど……えっと、星谷くんに予定なかったら、その……一緒に過ごしませんか……?」
い、言えた。するとすぐに顔が熱くなった。正直、自信がないわけではない。だけどそれは100パーセントではないので、ぎゅっと目を瞑って返事を待つ。
もしも断られてしまったら、恥ずかしすぎてどうしよう──
「うん、いいよ」
「え…………ほんとに?」
「ほんと」
でも、そんな心配はいらなかったようで。期待していた言葉をもらえてほっとした反面、ほんとにいいの? とびっくりもした。
だけど星谷くんが頷いてくれたから、不安な気持ちよりも嬉しさで胸がいっぱいになっていく。
こんな日が来るなんて、本当に夢みたいだ。