目を開けると、ルーナさんの言っていた通りすっかり夜が明けていた。
隣を見ればヴィクターが、すうすうと静かな寝息を立てている。外はもう明るいというのに、珍しく寝坊をしているらしい。
音を立てないよう慎重に起き上がり、無防備な寝顔を覗き込む。硬い髪をそっと撫で、彼の頬に寄り添った。
(……あったかい)
こうして触れ合っているだけで、胸にじわじわと喜びがあふれてくる。
ヴィクターが生きて、側にいてくれる。それってなんて、しあわせなことなんだろう。
「……シーナ?」
不意に、低くかすれた声で名を呼ばれた。
けれどまだ離れたくなくて、私は聞こえない振りをする。ヴィクターに毛並みをぴったりくっつければ、ヴィクターがくくっと笑い声を立てた。
「やめろ。くすぐった――……っ!?」
時計を見て、ぎょっと顔をひきつらせる。
しまった、と呟くなり、ヴィクターは勢いよく起き上がった。またたく間に身支度を整え、私を肩に載せて走り出す。
「シーナ、出勤するぞ! 朝食は抜きだ」
「ぱうぅっ?」
ええっ!?
そ、そんなの駄目だよ。騎士なんて体力仕事なんだから、ごはんはしっかり食べないと!
しっぽでビシバシ叩いて叱りつけるのに、ヴィクターは無視して部屋を飛び出した。その瞬間、危うくロッテンマイヤーさんにぶつかりそうになる。
「ま、まあ旦那様」
ロッテンマイヤーさんが目を丸くした。
「この時間まで起きていらっしゃらないものですから、様子を見に伺いました。朝食は召し上がりますか?」
「いや、いら」
「ぱぇあ〜〜〜っ!」
(召し上がりますっ!)
大声でさえぎる私に、ヴィクターはしかめっ面を向ける。
「そんな時間はない。本部に着いたらお前は食堂に連れて行ってやるから、もう少し我慢しろ」
いや私の話じゃなくってね!?
毛を逆立てて怒ろうとしたら、「おはよー」と間延びした声が聞こえてきた。
はっと振り向くと、大あくびしながらカイルさんがこちらに歩いてくる。寝癖のついた髪を掻き、照れたみたいに笑った。
「悪い悪い、めっちゃ寝坊したわ。……って、もしやヴィクターも?」
「カイル。そういえば泊まっていたな……」
眉をひそめるヴィクターに、カイルさんはまた大あくびして頷いた。ヴィクターの肩にいる私に目線を合わせ、ちょんとつつく。
「シーナちゃん、おはよう。いや実は、儀式前日かと思うとなぜかオレまで緊張しちゃってさぁ。騎士寮の硬いベッドより屋敷の方が眠れるかな〜と思って泊まったんだけど、駄目だったよ。全っ然寝つけなかった」
「俺も……」
言いかけて、ヴィクターは慌てたみたいに口をつぐんだ。
瞬きしたカイルさんが、探るようにヴィクターを見つめる。ややあって、にやぁっと意地悪く口角を上げた。
「ふぅぅぅん〜? さてはヴィクター、お前も楽しみすぎて寝られなかったんだろー? いよいよシーナちゃんが人間に戻るから、これからは思う存分二人っきりで甘酸っぱく語り合えると期待して妄想してあ痛あぁっ!!」
「だ、ま、れ」
ヘッドロックを決められて、カイルさんは両手を振って暴れまくる。ほうほう、照れるね。ヴィクターってば遠足前日みたいにはしゃいでくれたんだ?
上機嫌にぱえぱえ鳴く私に気づき、ヴィクターはちょっぴり目元を赤くした。乱暴にカイルさんを突き放すと、「行くぞ」とつっけんどんに告げる。
「まあ、旦那様。きちんと団の食堂で何か召し上がってくださいましね?」
「ぱえっ! ぱえっ!」
「……なるべくな」
ロッテンマイヤーさんと私、双方向から責められて、ヴィクターは仕方なさそうに返事をした。玄関まで見送ってくれたロッテンマイヤーさんは、なぜか物問いたげな顔をして私を見る。ん?
「ぽえ?」
「あ、いえ……。失礼、いたしました。先ほど愚息が、おかしなことを言っていたような気がしまして。ですがおそらく、聞き間違いだったのでしょう」
気を取り直したようにうんうん頷いた。あー……。
どうしよう、今のうちにカミングアウトするべきかな? いきなり人間になって帰ってきたら、ロッテンマイヤーさんもびっくりしちゃうよね。
ヴィクターを見上げれば、彼も眉根を寄せて考え込んでいた。
悩む私たちを見て、カイルさんはおかしそうに笑みをこぼす。強引にヴィクターの背中を押して、ロッテンマイヤーさんを振り返った。
「そそ、単なる聞き間違いだよ母さん。でもさ、今夜は若い女の子が喜びそうな、とびきり美味しい夜食と甘いお菓子を用意しておくのをお薦めするな。儀式終わりできっと、お腹すかせてると思うんだよねー」
澄まし顔で告げる。
目を丸くするロッテンマイヤーさんに軽く手を振って、私たちは馬車へと乗り込んだ。
「聖堂へは何時ごろ着けばいいの?」
「さあな、キースは夜が明ける前に来いと言っていたが。何でも巫女は儀式前に身を清め、祭壇の間で一人で祈りを捧げるのが習わしらしい。……が、儀式自体は月が中天にかかって行われるから、仕事を終えて向かえば問題なかろう」
「……キースと神官長たちの、発狂する姿が目に浮かぶ」
カイルさんが遠い目をした。
騎士団本部に到着してすぐ、カイルさんは月の聖堂に使いを出した。夕方までには向かうと伝えてくれたらしい。
「ここがギリギリだと思うよ。ともかくヴィクターは夕方を目処に仕事を終わらせてくれ。オレも絶対にシーナちゃんの舞は見たいから、全力で頑張るよ」
「ぱえぱえ〜」
しっぽを振って応援しつつ、私は真剣に月の舞の練習をする。本音を言えば人間状態でリハーサルをしたかったけれど、まあこればっかりはしょうがない。
(ここでくるっと回って、それから――……)
集中しているはずなのに、ふとした拍子に思考が飛んでいく。眠るように穏やかに息を引き取った、少年の姿を思い出す。
そのたび私は足が止まってしまい、ヴィクターが訝しげに私を見た。何でもないよ、と私は慌てて舞を再開する。
あっという間に午後になり、ヴィクターとカイルさんはようやく書類を片付け始めた。
「よし、こんなところか。少し早いが、そろそろ出発を――」
「ちっとも早くなぁぁぁいっ!! 遅い、いくらなんでも遅すぎるっ!! ヴィクター殿下は崇高な儀式を何とお考えかーーーっ!?」
「あれ、キース。しびれを切らして迎えに来たの?」
書類をトントンと合わせながら、カイルさんがのんきに声を掛けた。キースさんの目がますます吊り上がり、キッとカイルさんを睨みつける。
「あなたもあなたですよ、カイル! ヴィクター殿下の横暴を軌道修正するのはあなたの役目でしょう!?」
「いやぁ、だってさぁ。聖獣のシーナちゃんと仕事するのも今日で最後と思うと、離れがたいというか、聖堂なんかに預けるのはもったいないというか」
「キイィッ! わたしだって今日は一日シーナ・ルー様とご一緒できるとウッキウキだったのにぃぃぃっ!!」
悔しがるキースさんを無視して、ヴィクターは私を抱き上げた。ぎゃんぎゃん文句を言うキースさん、完全に面白がっているカイルさんを従えて執務室を出る。
「あっ、団長――!!」
廊下の向こうから、リックくんが泡を食って走ってきた。顔をこわばらせている彼に、ヴィクターとカイルさんがさっと雰囲気を変える。
「どうした」
「か、街道に魔獣が出たそうですっ。数がかなり多いから、先輩たちがすぐに団長に知らせてこいって」
「よし、わかった。――キース!」
すぐさま振り返り、ヴィクターは私をキースさんに押しつけた。キースさんの手の中で固まる私を、ヴィクターは軽く指で弾く。
「俺達はすぐに討伐へ向かう。シーナ、お前は先にキースと共に聖堂へ行っていろ」
「ぱ、ぱえ……っ」
(で、でも……!)
魔獣と戦うなら、私もヴィクターの側にいなくっちゃ。
身振り手振りで離れたくないと訴えるのに、ヴィクターは静かに首を横に振った。
「第一に優先すべきは儀式だろう。今日を逃せば、また次の満月まで待たねばならなくなる。魔獣の力を削ぐためにも、お前はお前の仕事に集中するんだ。シーナ」
(あ……!)
たしなめるように言われ、はっとする。
そうだ。
魔素を浄化すれば、魔獣の勢力も衰える。儀式は絶対に、今日行わなければならないのだ……。
しゅんと耳を垂らし、私はいやいやながらも頷いた。
上目遣いに見つめれば、ヴィクターが少しだけ頬をゆるめる。
「安心しろ。とっとと片付け、儀式には必ず間に合ってみせる」
「だね。魔獣なんかに絶対に邪魔はさせないって」
不敵に笑うと、二人はすぐさまリックくんを連れて駆け出した。
黙って背中を見送る私を、キースさんが優しく撫でて慰める。
「心配なさらずとも、ヴィクター殿下方なら大丈夫ですよ。――さあ、それではシーナ・ルー様! 我らも我らの仕事を果たしましょう!」
「……ぱえっ!」
キースさんの激励に、私も力いっぱい返事をする。短い手を勇ましく振り上げて、キースさんと共に月の聖堂へと出発した。
隣を見ればヴィクターが、すうすうと静かな寝息を立てている。外はもう明るいというのに、珍しく寝坊をしているらしい。
音を立てないよう慎重に起き上がり、無防備な寝顔を覗き込む。硬い髪をそっと撫で、彼の頬に寄り添った。
(……あったかい)
こうして触れ合っているだけで、胸にじわじわと喜びがあふれてくる。
ヴィクターが生きて、側にいてくれる。それってなんて、しあわせなことなんだろう。
「……シーナ?」
不意に、低くかすれた声で名を呼ばれた。
けれどまだ離れたくなくて、私は聞こえない振りをする。ヴィクターに毛並みをぴったりくっつければ、ヴィクターがくくっと笑い声を立てた。
「やめろ。くすぐった――……っ!?」
時計を見て、ぎょっと顔をひきつらせる。
しまった、と呟くなり、ヴィクターは勢いよく起き上がった。またたく間に身支度を整え、私を肩に載せて走り出す。
「シーナ、出勤するぞ! 朝食は抜きだ」
「ぱうぅっ?」
ええっ!?
そ、そんなの駄目だよ。騎士なんて体力仕事なんだから、ごはんはしっかり食べないと!
しっぽでビシバシ叩いて叱りつけるのに、ヴィクターは無視して部屋を飛び出した。その瞬間、危うくロッテンマイヤーさんにぶつかりそうになる。
「ま、まあ旦那様」
ロッテンマイヤーさんが目を丸くした。
「この時間まで起きていらっしゃらないものですから、様子を見に伺いました。朝食は召し上がりますか?」
「いや、いら」
「ぱぇあ〜〜〜っ!」
(召し上がりますっ!)
大声でさえぎる私に、ヴィクターはしかめっ面を向ける。
「そんな時間はない。本部に着いたらお前は食堂に連れて行ってやるから、もう少し我慢しろ」
いや私の話じゃなくってね!?
毛を逆立てて怒ろうとしたら、「おはよー」と間延びした声が聞こえてきた。
はっと振り向くと、大あくびしながらカイルさんがこちらに歩いてくる。寝癖のついた髪を掻き、照れたみたいに笑った。
「悪い悪い、めっちゃ寝坊したわ。……って、もしやヴィクターも?」
「カイル。そういえば泊まっていたな……」
眉をひそめるヴィクターに、カイルさんはまた大あくびして頷いた。ヴィクターの肩にいる私に目線を合わせ、ちょんとつつく。
「シーナちゃん、おはよう。いや実は、儀式前日かと思うとなぜかオレまで緊張しちゃってさぁ。騎士寮の硬いベッドより屋敷の方が眠れるかな〜と思って泊まったんだけど、駄目だったよ。全っ然寝つけなかった」
「俺も……」
言いかけて、ヴィクターは慌てたみたいに口をつぐんだ。
瞬きしたカイルさんが、探るようにヴィクターを見つめる。ややあって、にやぁっと意地悪く口角を上げた。
「ふぅぅぅん〜? さてはヴィクター、お前も楽しみすぎて寝られなかったんだろー? いよいよシーナちゃんが人間に戻るから、これからは思う存分二人っきりで甘酸っぱく語り合えると期待して妄想してあ痛あぁっ!!」
「だ、ま、れ」
ヘッドロックを決められて、カイルさんは両手を振って暴れまくる。ほうほう、照れるね。ヴィクターってば遠足前日みたいにはしゃいでくれたんだ?
上機嫌にぱえぱえ鳴く私に気づき、ヴィクターはちょっぴり目元を赤くした。乱暴にカイルさんを突き放すと、「行くぞ」とつっけんどんに告げる。
「まあ、旦那様。きちんと団の食堂で何か召し上がってくださいましね?」
「ぱえっ! ぱえっ!」
「……なるべくな」
ロッテンマイヤーさんと私、双方向から責められて、ヴィクターは仕方なさそうに返事をした。玄関まで見送ってくれたロッテンマイヤーさんは、なぜか物問いたげな顔をして私を見る。ん?
「ぽえ?」
「あ、いえ……。失礼、いたしました。先ほど愚息が、おかしなことを言っていたような気がしまして。ですがおそらく、聞き間違いだったのでしょう」
気を取り直したようにうんうん頷いた。あー……。
どうしよう、今のうちにカミングアウトするべきかな? いきなり人間になって帰ってきたら、ロッテンマイヤーさんもびっくりしちゃうよね。
ヴィクターを見上げれば、彼も眉根を寄せて考え込んでいた。
悩む私たちを見て、カイルさんはおかしそうに笑みをこぼす。強引にヴィクターの背中を押して、ロッテンマイヤーさんを振り返った。
「そそ、単なる聞き間違いだよ母さん。でもさ、今夜は若い女の子が喜びそうな、とびきり美味しい夜食と甘いお菓子を用意しておくのをお薦めするな。儀式終わりできっと、お腹すかせてると思うんだよねー」
澄まし顔で告げる。
目を丸くするロッテンマイヤーさんに軽く手を振って、私たちは馬車へと乗り込んだ。
「聖堂へは何時ごろ着けばいいの?」
「さあな、キースは夜が明ける前に来いと言っていたが。何でも巫女は儀式前に身を清め、祭壇の間で一人で祈りを捧げるのが習わしらしい。……が、儀式自体は月が中天にかかって行われるから、仕事を終えて向かえば問題なかろう」
「……キースと神官長たちの、発狂する姿が目に浮かぶ」
カイルさんが遠い目をした。
騎士団本部に到着してすぐ、カイルさんは月の聖堂に使いを出した。夕方までには向かうと伝えてくれたらしい。
「ここがギリギリだと思うよ。ともかくヴィクターは夕方を目処に仕事を終わらせてくれ。オレも絶対にシーナちゃんの舞は見たいから、全力で頑張るよ」
「ぱえぱえ〜」
しっぽを振って応援しつつ、私は真剣に月の舞の練習をする。本音を言えば人間状態でリハーサルをしたかったけれど、まあこればっかりはしょうがない。
(ここでくるっと回って、それから――……)
集中しているはずなのに、ふとした拍子に思考が飛んでいく。眠るように穏やかに息を引き取った、少年の姿を思い出す。
そのたび私は足が止まってしまい、ヴィクターが訝しげに私を見た。何でもないよ、と私は慌てて舞を再開する。
あっという間に午後になり、ヴィクターとカイルさんはようやく書類を片付け始めた。
「よし、こんなところか。少し早いが、そろそろ出発を――」
「ちっとも早くなぁぁぁいっ!! 遅い、いくらなんでも遅すぎるっ!! ヴィクター殿下は崇高な儀式を何とお考えかーーーっ!?」
「あれ、キース。しびれを切らして迎えに来たの?」
書類をトントンと合わせながら、カイルさんがのんきに声を掛けた。キースさんの目がますます吊り上がり、キッとカイルさんを睨みつける。
「あなたもあなたですよ、カイル! ヴィクター殿下の横暴を軌道修正するのはあなたの役目でしょう!?」
「いやぁ、だってさぁ。聖獣のシーナちゃんと仕事するのも今日で最後と思うと、離れがたいというか、聖堂なんかに預けるのはもったいないというか」
「キイィッ! わたしだって今日は一日シーナ・ルー様とご一緒できるとウッキウキだったのにぃぃぃっ!!」
悔しがるキースさんを無視して、ヴィクターは私を抱き上げた。ぎゃんぎゃん文句を言うキースさん、完全に面白がっているカイルさんを従えて執務室を出る。
「あっ、団長――!!」
廊下の向こうから、リックくんが泡を食って走ってきた。顔をこわばらせている彼に、ヴィクターとカイルさんがさっと雰囲気を変える。
「どうした」
「か、街道に魔獣が出たそうですっ。数がかなり多いから、先輩たちがすぐに団長に知らせてこいって」
「よし、わかった。――キース!」
すぐさま振り返り、ヴィクターは私をキースさんに押しつけた。キースさんの手の中で固まる私を、ヴィクターは軽く指で弾く。
「俺達はすぐに討伐へ向かう。シーナ、お前は先にキースと共に聖堂へ行っていろ」
「ぱ、ぱえ……っ」
(で、でも……!)
魔獣と戦うなら、私もヴィクターの側にいなくっちゃ。
身振り手振りで離れたくないと訴えるのに、ヴィクターは静かに首を横に振った。
「第一に優先すべきは儀式だろう。今日を逃せば、また次の満月まで待たねばならなくなる。魔獣の力を削ぐためにも、お前はお前の仕事に集中するんだ。シーナ」
(あ……!)
たしなめるように言われ、はっとする。
そうだ。
魔素を浄化すれば、魔獣の勢力も衰える。儀式は絶対に、今日行わなければならないのだ……。
しゅんと耳を垂らし、私はいやいやながらも頷いた。
上目遣いに見つめれば、ヴィクターが少しだけ頬をゆるめる。
「安心しろ。とっとと片付け、儀式には必ず間に合ってみせる」
「だね。魔獣なんかに絶対に邪魔はさせないって」
不敵に笑うと、二人はすぐさまリックくんを連れて駆け出した。
黙って背中を見送る私を、キースさんが優しく撫でて慰める。
「心配なさらずとも、ヴィクター殿下方なら大丈夫ですよ。――さあ、それではシーナ・ルー様! 我らも我らの仕事を果たしましょう!」
「……ぱえっ!」
キースさんの激励に、私も力いっぱい返事をする。短い手を勇ましく振り上げて、キースさんと共に月の聖堂へと出発した。